大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題

大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題(4)

先進的な不動産コンサルタント

 ハイアス・アンド・カンパニーが運営する新・不動産ネットワーク「不動産相続の相談窓口」は、不動産コンサルティングのビジネス化を目指し、不動産相続に関する知識と顧客の相談に応じるためのコンサルティングスキル、多様なソリューション提案力を備えることで、地域の地主や富裕顧客から自宅や遊休地、収益資産などの不動産資産に関する相談をいただく窓口となる地域密着不動産ネットワークだ。

 家計資産の約7割は高齢者層が保有しており、「資産移転市場」という巨大市場の発生が見込まれる。その資産の規模は平均で年間37兆円(12年・日本総研)という試算もあり、不動産資産が動く相続を商機とするべく着々とネットワークを広げている。

 (株)K-コンサルティングの代表取締役・大澤健司氏は、相続マーケットでビジネスを行う不動産事業者のひとり。大澤氏は不動産の売買・賃貸仲介を担当していた当時、地価や家賃の下落、若年人口の減少で先行きに不安を抱えていました。そのような時、自社の管理物件が、オーナーの相続を機に他社で売却されるという苦い経験をします。「これでは、マーケットが細っていくばかりか、代替わりによってそれまで築いてきた関係も無駄になる」と相続時の相談に乗れるようになることの必要性を痛感しました。

 大澤氏は相続の知識をつけ、資格を取得し、顧客に対して「相続勉強会」を開催するようになりました。すると、顧客の中には相続で心配を抱えているが相談先がないという人も多く、中立的にアドバイスをするうちに、顧客の方からアパートを手放して現金化したい、遊休地に賃貸物件を建てたいというような依頼を受けるように。大澤氏は相続マーケットでビジネスができることを実感すると同時に、扱いの難しい不動産の取引や相続についてアドバイスをできるのは、税理士や弁護士でなく自らのような不動産のことがわかる者しかいないと確信しました。いまは、「不動産相続の相談窓口」を掲げて地域の不動産オーナーへの継続的な啓発活動を行いながら不動産コンサルティングビジネスを展開されています。

 相談対応で意識していることは、顧客の持つ不動産資産を最適な状態にすることと言います。顧客の家族関係や資産全体の内容を聞き取ったうえで、家族の幸せな相続が実現することを第一に考えます。代が替わっても不動産が活かされるように、また争いのもとになったりするようならほかの人の手に渡して(売却して)活かされるようにと考えることは、地域をよく知る不動産のプロだからこそできることです。そしてこの考え方が巡り巡って地域の不動産資産の価値を高めることに繋がっているのです。

『家族の幸せと財産をつなぐ不動産コンサルティング~もめる相続 もめない相続 カギとなるのは不動産~』

○著者=川瀬太志・矢部智仁・不動産相続の相談窓口プロジェクト
○発行=住宅新報社
○定価=1200円(本体、税別)

 不動産相続の相談窓口では「新・不動産ネットワーク 不動産相続の窓口事業説明会」を全国各地で開催している。詳しくは、「不動産相続の相談窓口セミナー」を参照

大澤健司(おおさわけんじ)

不動産売買・開発、賃貸管理に従事し、不動産相続コンサルティングを始める。2016年に独立後、千葉県柏市で活動。公認不動産コンサルティングマスター実務研修や早稲田大学大学院で講師を務めるほか、不動産オーナー向けの相続勉強会を毎週開催している。