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大言小語 潜在的な災害弱者

 東日本大震災後に「国土強靭化」が国の政策に掲げられてから早くも10年が過ぎた。避けることがきない災害に対して、最悪の事態を想定しながら、人命を最大限に守り、経済社会の致命的な被災を抑止するなどの事前対策を講じることで、被害を最小化し、早期の復旧、復興につなげることが国土強靭化の目指すところで、大震災の教訓でもある。

この10年間に国土強靭化計画は都度精度アップを重ねてきているものの、災害は人知を超え、今回の大地震でも多くの犠牲者を出してしまった。

 ▼国土強靭化の一環として、国は全国の住宅の耐震化率の向上に取り組んでいる。2018年時点で5360万戸のうち4660万戸が耐震性があり、耐震化率は87%に達している。2030年度までには、耐震性が不十分な住宅を概ね解消できることが見込まれている。都市部や人口の多い地域が、財政的な事情も絡んで対策が先行しがちなのが常だが、能登のように人口が少なく高齢化が進み、住宅・建築物の建て替えもままならない地域も都市部と同等のスピード感をもって国土強靭化を推し進めていくことが求めらるのではないだろうか。 ▼能登半島のような災害に脆弱な地域がほかの地方にも多く存在していると見られるからだ。そうした地方の自治体には、依然として災害弱者が多く潜在している視点で、耐震化向上に取り組んでもらいたい。一刻の猶予も許されない。