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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇104  シリーズ その想い、どこへ 不動産流通プロフェッショナル協会の真鍋茂彦代表に聞く 「高度なコンサルティングは哲学」

FRP創設の狙い

 ――一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(FRP)が発足したのは21年春でした。不動産流通推進センターが認定している公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターの資格保持者を会員とし、推進センターに両資格制度の方向性について提言していくことを目的としています。FRPを立ち上げた熱い想いはどこからきたのでしょうか。

 私は大学卒業後、当時の藤和不動産に入社し宣伝や営業、企画などに従事しました。推進センターに移ってからは今年8月に退職するまで二十年余りお世話になりました。その間、教育事業(資格部門)一筋でやってきましたので、不動産流通市場をなんとか改革したいという想いが募っていたのだと思います。

 ――今、「改革」と言われましたが、具体的にはどういうことでしょうか。

 簡単に言うと、資格制度や仕組みを作っても肝心のプレイヤーや事業者が高い志を持っていなければ市場はよくなりません。そこで宅建士の上級資格として発足したコンサルティングマスターと宅建マイスターらを会員とする団体をつくり、自らその職業倫理と資質を高めていく活動を展開させたいと考えました。

 ――発足して2年が経ちましたが、手ごたえは。

 今年8月に行った不動産流通推進センターへの3回目の提言では、両資格者が自らを律する「行動宣言」を名刺や店舗内のプレートなどに明示することを求めています。消費者(依頼者)に直接アピールすることなくして信頼を得ることはできないからです。業界マスコミに取り上げていただいたこともあって、会員らの士気も徐々に高まってきたと感じています。

 ――今年から会員向けのプロフェッショナルプレイヤー・フィロソフィー講座(PPP講座)が始まりましたが、その狙いはどこに。

 コンサルティングマスターは税制、法律、金融など幅広い知見をもとにコンサルを行うという意味で、広義の上級宅建士という位置づけとなります。それに対し宅建マイスターはあくまでも宅建業務(売買取引)の範囲ではあるけれども、表面化していない取引リスクについても予見する能力を持つという意味で狭義の上級宅建士となります。コンサルのように宅建業を横に広げるのではなく、縦に深堀りするというイメージでしょうか。ただ、いずれもその仕事が国民から信頼されるためには、プレイヤーとしてのコンプライアンス意識、人間としての品格が備わっていなければなりません。PPP講座はそのための〝精神道場〟のようなものです。

選ばれる資格へ

 ――そういう精神性を身に着ける意義を理解していないというか、余裕のない人たちの多いことが不動産業界の現実であるという気がします。

 その通りですね。仮にそういう努力をしても、〝形のないサービスにはお金を払ってもらえない〟という意識が依然根強いと思います。

 ――どうすればいいですか。

 お金を払ってもらえないというのは勘違いで、流通業界が国民からリスペクトされるようにさえなれば大きく変わります。依頼者ファーストを定着し、そうでない業者は完全に排除され、社会的信頼度の高い業界になれば、形のないサービスであろうと報酬はもらえると思います。

 ――第2回目のPPP講座には「高度なコンサルティングは哲学」というサブタイトルが付けられていました。この高邁な想いは今後どこへ向かうのでしょうか。

 幅広い知見をもとにコンサルを行うといっても人間は万能ではありません。不完全は承知の上で、高度なコンサルティングが目標とすべきは、プロとしての洗練された能力と人間としての誠意を尽くすところから生まれる透明な説得力だと思います。コンサルティングマスターも宅建マイスターも、プレイヤーとしての参加資格ではなく、国民から選ばれるための資格だという意識を常に持っていていただきたいと願っています。