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大言小語 そこにビジョンはあるか

 11月に入り、税制論議が一層活発化している印象だ。毎年恒例ではあるが、与野党や中央省庁、各業界、国民がそれぞれの立場から意見を交わしており、本紙でも取材記事や社説などで頻繁に取り上げているテーマである。

 ▼一般の報道や国民の興味としては、岸田文雄総理が提示した所得税〝減税〟等が話題の中心だろう。物価高や所得低迷、国民負担率拡大などにより国民の苦境は厳しさを増しており、対応の必要性は改めて言うまでもない。しかし、その手段として、現在提示されている施策は妥当なのか。その点を不透明に感じる人が多いことが、この件が議論の的となっている一因と思える。

 ▼税制度は行政の財源としてだけでなく、法令・条例等と並び、国や自治体が持つ「社会をどのようにデザインするか」というビジョンを直接反映する一面を持つ。原則として、推進・誘導したい分野は税負担を下げ、規制したい分野は課税を強める。一部では「消費税は『消費に対する罰金』」と揶揄(やゆ)されることもあり、それは流石に品のない解釈だとは感じるが、税制度がある種のメッセージとして受け取られることは確かだろう。

 ▼そうした意味で、件の〝減税〟には確かなビジョンがあるのか。住宅・不動産業界の要望に対し、与党はどのようなメッセージで返すのか。賛否はさておき、社会をデザインする立場として、堂々と明確な姿勢を示してもらいたい。