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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇96 FRPが提言 仲介本来の姿へ『行動宣言』 未だ曖昧「宅建士」の立ち位置

 公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターを会員とする一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(FRP)は8月21日、両資格を公認する不動産流通推進センターへ3度目の提言を行った。

 今回の提言ではまず、両資格者が以下の3項目を自らの「行動宣言」として明記することを求めている。(1)私たちは、依頼者利益のために最善を尽くし、依頼者の不利益となる行動はいたしません。(2)私たちは、真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽はいたしません。(3)私たちは、依頼者の意思決定に必要な情報に関しては、依頼者が十分納得するように説明を尽くします。

 この行動宣言は、FRPが策定した「行動規範」からの抜粋で、その行動規範「前文」にはこうある。「私たち公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターは国民の重要な財産である不動産の取引を、依頼者にとって安全かつ最善最適な取引となるよう専門家としての知識・倫理に基づき全力を尽くすことを使命とします」。

 推進センターが提言を受け入れた場合、行動宣言は名刺に印刷、あるいはプレートを作成し店舗に置くなどして依頼者に直接アピールする。

 こうした提言の背景には、FRPの認識として、現在の不動産流通業界は業法の順守・知識研鑽などについては充実してきているものの、一般消費者が不信感を抱きやすい営業行為に関しては未だ改革の途上にあるという感触がある。特に、どのような規範・立場に基づいて業務を行っているのかが曖昧であり、そこに国民からの信頼感が今一つ向上しない原因があると感じている。

 FRP顧問でかつて三井不動産リアルティ社長、不動産流通経営協会理事長を務めた竹井英久氏(現在セゾンリアルティ会長)はこう指摘する。「業界全体の底上げを図るには、まず一部の覚醒した人たちから本来の姿の仲介を実現し、それがいつの日か業界を変えていく力になると願うしかない。また、そうした手順がネット時代の今、宅建士個人の能力・信頼・人柄などに基づくビジネス拡大に資することになる」。

 宅建士の社会的信頼を高めるためには、宅建士を抱える不動産会社の協力が欠かせない。具体的には宅建士を一般的従業員とは区別し、「企業

内士業」という特別職と認識し、宅建士が上記の行動宣言や規範に則って業務を行うことできるようにする。

 例えば、FRPが定めた行動規範の中には「私たちは、利益相反に関し適切な管理を行い、依頼者に報告いたします」という項目がある。つまり、売主の利益を損なう物件情報の囲い込みは行わないということだから、そうした宅建士の姿勢に会社も理解を示すということである。そうした難しい立場にある企業内士業の宅建士の後ろ盾となる組織として、創設が期待されるのが「宅建士協会」である(本コラム7月25日号参照)。

 「宅建士協会」は既存業界団体が共同で立ち上げ、宅建士としての行動規範、更には具体的な営業実務基準(FRPで検討中)を定め、宅建士協会加盟の宅建士を指導監督することが望ましい。違反者には厳しい制裁措置も設けるべきである。それが、従来の「宅地建物取引主任者」から、「宅地建物取引士」への名称変更を強く要望した業界の責務であり、宅建士を名実共に〝士業〟へ昇格させる手段となる。

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第2回ppp講座

       9月22日開催

 FRPは9月22日、第2回PPP(プロフェッショナルプレイヤー・フィロソフィー)講座を開く。コンプライアンス運動の頂点を目指す講座で必要な職業倫理と使命感を学ぶ。

 講師は竹井英久氏、東急リバブル常勤監査役の橋本明浩氏、NextBRANDING社長の佐藤雄樹氏が務める。受講料は4000円で申し込みはPeatixで受付中。時間は13時~17時まで。