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~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(32) 自らの性格を分析して対応策 「契約後の気の緩みを引き締める」

 売買契約後、私たち仲介担当者にほぼ現れる症状が1つある。それは「気の緩み」だ。具体的には(1)必要な連絡が遅くなる、(2)確認せず勝手に解釈して進めるようになる。要は顧客が思う欲しい報告、連絡、相談(以下、報連相)に鈍感になりやすくなるのだ。売買契約が緊張感のあるものだとその反動で、契約から決済まで間が空くと中だるみでこの症状にかかりやすくなる。そのため契約後に時間が空く売主側がかかりやすく買主側でも住宅ローンやその他の手続きに関与しないと中だるみが生じてかかるようだ。

 「いや、僕はそんなものにはかかりませんよ」と言う担当者でも契約前後でスピード感が異なることが多い。職業病みたいなものなので仲介担当者は強弱あれども1回はかかったことがあるに違いない。恥ずかしながら筆者はかかりやすい。経験を積んだ今でも決済まで間が空くと、この連絡は明日でもいいか、と確実に気が緩んだ対応をしてしまう。引き締めが必要だ。

 気の緩みは「今頃そんな重要なことを言ってくるのか」「契約が終わったら急にぞんざいな扱いになった」と顧客の怒りにつながることが多い。要は顧客が「軽く見られている」と感じたことへの怒りだが、気の緩みはそこに直結する。その代償は(1)不動産取引がスムーズに進まない、(2)担当者の交代依頼、(3)仲介手数料の不払いとなる。どれも起こされて嬉しいことは1つもなく、本来の業務から見ても余計なことと言える。そのため、私たちは売買契約後に「気を緩めない」ようにしなければならないのだが、それが容易ではない。

 そこで「気が緩まないような仕組み・システムをつくる」もしくは「気が緩んでもリカバーする方法をつくる」などで対応することになる。気の緩みは性格に起因するので、2つとも個人に合った方法を見つければ良い。

 筆者は(1)売買契約時に顧客と報連相の時期等をすり合わせする、(2)顧客が考える重要な報連相は連絡をしてもらう、この2つをシステム的に行うことで対応している。契約後に面を向かって顧客と報連相の時期を決められるし、報連相の間が空いたとしても、最初に決めたことなのでクレームにならない。また、こちらからも連絡しづらいことはない。顧客側も決済までのナビゲートを伝えられるので、重要人物であると感じてもらうことができる。

 また、顧客はプロから見て「こちらから案内をしなくてもいい」ことでも手続き上重要と思っている事柄があり、それは報連相をしてくるべき、と考えていることがある。たとえば「賃貸の解約手続き」などだ。そのようなことはこちらで分かりづらく、察しづらい。顧客が思う重要な事柄は先方から教えてもらうように、手立てを整えておくことは有効となるはずだ。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。