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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(28) ~畑中学 取引実践ポイント~ 専門用語を最小限に緊張ほぐす「売買契約時に手続きの流れ」

 売買契約時は売主と買主の心理状況をマネージメントしながら、(1)必要書類の確認→(2)重要事項説明→(3)売買契約→(4)物件周辺状況等報告書・設備表(告知書)→(5)その他特約や覚書→(6)媒介契約書(未取得の場合)→(7)各書類の署名捺印→(8)今後の流れ・スケジュールの確認という順で読み合わせや手続きを進めていく。

 心理状況のマネージメントは不可欠だ。不動産の取引に慣れている売主や買主なら別だが、一般的には緊張や不安を感じて売買契約の場にいる。その最中、専門用語での説明が続くと「よく分からないのに当事者である私を置いてきぼりに勝手に進められている」と疎外感や不満を感じてしまう。それは後日スムーズな取引の阻害要因となる。そのため売買契約の場では、専門用語は「こんな意味ですよ」とフォローしつつ、「ご質問はいかがでしょうか」「この内容はどうお感じでしょうか」など当事者意識を持たせつつ、リラックスして参加できるように合いの手を入れておきたい。

 売主や買主が今どう感じているのか、心理状況の確認を行い緊張や不安を払拭(ふっしょく)していく。

 手続きは(1)必要書類の確認から入る。(7)署名捺印時での確認でも構わないが、忘れていた場合取りに帰ったりすることを考えると、冒頭に確認をしておくのがベターだ。(2)重要事項説明は原則、売主側の宅建士(宅地建物取引士)が買主へ行う。流れで(3)~(5)まで同様だ。共同仲介の買主側なら買主と一緒に説明を聞き事前に知らされていない内容がないかを確認していこう。(3)売買契約も事前の内容と異なった点がないかを確認する。売主や買主の契約条件やスケジュール感と頭の中で照らし合わせながら「この通りで大丈夫ですか」と1つ1つ確認しながら進めたい。続けて(4)物件周辺状況等報告書と設備表を説明する。

 この2つの書類は契約条件を記した内容であるのに、売買契約の場で買主が初めて見ることも多い。その場合は買主が理解できるようゆっくり丁寧に説明をしておきたい。スピードよりも理解が大事だ。(5)その他特約や覚書があるならその説明、(6)未取得なら媒介契約書の説明を行い、それらが済んだら「ここまでで何かございますか」と売主と買主に最終確認を行い、問題ないと言われたら、(7)各書類の署名捺印へと移る。

 ひとつ一つ署名捺印していくよりか、すべての書類に住所氏名を署名してもらい、終わったら捺印をしていく方が手が汚れないでいいだろう。 最後に(8)今後の流れとスケジュールを売主と買主で確認して終了となる。仲介手数料は(7)と(8)の間に受け取ることになる。所要時間は2時間ほど見ておき、事前に売主と買主に伝えておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。