総合

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(25) ~畑中学 取引実践ポイント~ 「売建物状況調査等の各種調査」トラブル回避へ慎重な対応を 

 売買契約前には必要に応じて4つの専門調査等を行う。専門家による(1)建物状況調査(インスペクション)(2)耐震基準適合証明検査(3)既存住宅瑕疵保険検査(4)フラット35適合証明検査の4つだ。

 主に中古戸建て・マンションの購入時に行う専門調査等で費用がかかる。大手仲介会社の場合売却サービスの一環として売主側で行うことがあるが、原則は買主側で行うと考えた方がよい。前回のコラムでも書いたが売買契約前のスケジュールがタイトの中で行うので段取りがうまくつかないことが多い。そのときは売買契約を先に延ばすしかなくなるので、先回りして段取りを組んでおこう。

 (1)建物状況調査とは、目視等による現況調査で構造安全性や劣化事象等の有無を把握するものだ。主に確認するのは、柱や床の傾き、壁のひび割れなどの構造安全性、雨漏りや水漏れの有無、設備や配管の故障等のチェックとなる。契約不適合責任により売主が建物状況を明確に書面で説明していない限り、引き渡し後に故障等が発覚すると売主に修補義務が生じる。「買主様から故障の報告がありました。ついてはその補修のため費用がかかります」「私が住んでいるときは、故障はなかったので支払いたくありません」といったトラブルを避けるためや連絡等の手間暇を考えると必須の検査と言える。注意点として買主の中には耐震診断と誤認する人もいるので建物状況の検査だと正確に内容を説明しておきたい。

 (2)耐震基準適合証明検査は買主も分かりやすい。ようは耐震診断で、地震に対する建物の強度や安全性を判定することだ。検査は設計図通りかを現地で目視する「予備調査」と。設計図から強度や建物の粘り強さ、ダメージを判断する「1次~3次診断」までになる。築年が昭和56年12月31日までの中古住宅を取得して住宅ローン控除を受けたい場合はこの検査を受けることになる。設計図書がないと検査できないことがある、と覚えておきたい。

 (3)既存住宅瑕疵保険検査は柱、基礎等の構造耐力上主要な部分と外壁、屋根等の雨水の浸入を防止する部分を検査する。検査結果に問題がないなら保険をかけられ、期間は1年・2年・5年、保険金は500万円または1000万円となる。保険のための検査なので細かい補修や改善点が指摘される。築年数が古い中古戸建てだと、フルリノベに近い指摘になることもある。

 (4)フラット35適合証明検査は買主がフラット35を利用する場合に住宅金融支援機構が定める技術基準に適合しているかを判断する検査だ。検査は設計図書等の書類審査と現地調査の2段階で主に耐久性基準、準耐火構造等を見る。都市部の3階建て中古戸建てだと基礎が地面から40センチないことが多く検査結果が不適合となることが多い。どの検査もおおむね2~3時間。売主から断られることもある。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。