決算

分譲住宅、用地取得難や資材価格高騰 24年度まで影響なく 野村不HD、商品企画を強化

 野村不動産ホールディグスは4月26日、24年3月期の連結業績予想を発表した。それによると、売上高、各利益共に過去最高を更新する見通し。売上高が二桁増の見通しである一方、純利益が0.7%増とほぼ横ばい水準。これについて、23年3月期の住宅販売が好調で利益率が高く、過去最高レベルだったが、「今期はそれが通常並みに戻る。高い利益率だった収益不動産でも同様。加えて、国内外の金利上昇によるコスト高を見込む」(同社)ためとした。

 4月に就任した新井聡同社社長は、「野村証券時代に感じていたのは、国内外の個人・法人の不動産に対するニーズは拡大と共に確実に多様化している。野村不動産グループは、そのような顧客ニーズに応えられるよう高いレベルで取り組んできた。25年に本社を芝浦プロジェクトへ移転する。これを契機に中期経営計画(中計)で示している高いステージにいけるようCEOとして気を引き締めて取り組んでいく」と抱負を述べた。

 マンション市況については用地の取得難や、昨年1年間を通じて建築費が5~10%上昇するという状況にある。これに対しては、「開発に掛かっている物件のうち25年3月期までの計上予定物件は既に工事発注を終えているので、建築コストは固まっている。今後、新規に用地取得する物件は今の市況を織り込んで事業計画を組み立てている。用地取得済みで、これから工事発注する物件は一定程度の建築費上昇の影響は受ける」(同)とし、今後、2年程度の影響は軽微とみている。

 コスト高を反映しマンションの販売価格が高騰しているが、「(消費者から)一定の理解を得ている」(同)との認識を示した。在宅勤務の普及などで商品企画への関心が高まっており、今後も多様化する消費者ニーズに合わせた提案をしていく方針だ。

 また、中計における住宅部門への影響についても一定の余裕を見た計画となっているため、「利益見込みを大きく下回ることとはない」(同)と予想している。

 オフィス市場の現状と今後の展望については、業績が堅調で企業が採用を増加。ワーカーに快適なオフィス空間を提供する中で一人当たりの面積を増やしていく動きもあるため、「オフィスニーズについては注視をする必要があるが、空室率が上昇し続けるという懸念は今のところない」(同)と見ている。

 海外事業については、ベトナムでの住宅事業が収益化。引き続き東南アジアでの拡大と共に、前期にアメリカでの事業参画を開始しており、今後も拡大成長を図る方針だ。

住宅や海外成長し、増収増益 オフィス空室率低下も

 一方、23年3月期の連結業績は増収増益となり、過去最高益を更新した。営業利益などで構成される事業利益は、初の1000億円超え。「物価や金利高で不透明な事業環境も、不動産事業には大きな影響がなかった」(同社)としている。

 セグメント別でも全ての部門で増益を確保。住宅部門は、好調な分譲マンション販売を反映し、減収増益となった。都市開発部門は、収益不動産事業の物件売却が減少した一方、粗利が増加したため減収増益となった。期末時点のオフィスの空室率は、前年同期より1.1ポイント低下し4.8%だった。商業施設は、昨年の「カメイドクロック」開業効果で増収となったほか、ホテル事業も改善した。

 同社として成長分野と位置付ける海外部門は大幅な増収増益となった。ベトナムにおける大型分譲住宅案件の本格的な利益貢献が始まったためとしている。仲介・CRE部門は、売買仲介事業の取扱高が拡大し、初めて1兆円を超えた。資産運用部門、運営管理部門のいずれも増収増益だった。

野村不動産HD

決 算 23年3月

売上高 6,547億円 (1.5%)

営業利益 995億円 (9.2%)

経常利益 941億円 (14.0%)

当期利益 645億円 (16.6%)

予 想 24年3月

売上高 7,500億円 (14.5%)

営業利益 1,030億円 (3.4%)

経常利益 940億円 (△0.1%)

当期利益 650億円 (0.7%)

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