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~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(23) 変動金利上昇リスク大きくない 「住宅ローンで知っておきたいこと」

 住宅ローンで顧客から質問されるのは次の3つに絞られるだろう。(1)変動金利での金利上昇リスク、(2)融資審査承諾の予想、(3)必要書類とスケジュール、この3点だ。

 そのため常日頃から不動産や金融関係の新聞や雑誌、ニュースに目を通して顧客が分かるように説明できる知識を蓄えておきたい。(1)変動金利での金利上昇リスクは必ず聞かれる最重要な点だ。この不安に対して、主に元利均等方式の返済方法の場合だが、「5年(返済額固定)ルール」「125%(返済額上限)ルール」「短期プライムレート(以下短プラ)」この3点から説明をする。

 まず「5年ルール」は適用金利が増減しても5年間は毎月のローン返済額は固定となるルールだ。毎月の返済額が10万円ならそれが5年間は続くことになる。「125%ルール」はこの5年が経過した後だが、6年目に適用金利により返済額が見直されても、金利が著しく上昇しても前返済額の125%までしか増額とならないルールだ。毎月10万円の支払いなら、毎月12.5万円で抑えられる。この2つのルールにより顧客に対して急に家計を圧迫することはなく、かつ想定する返済額の125%でも家計のやり繰りができるのであれば、大きな問題が生じないことを伝えたい。ただし、元利割合は増減し金利が増えればそれだけ返済する元金が減ることは注意する。増減前は毎月返済の10万円のうち元金9万円、利息は1万円だったのが、元金8万円で利息は2万円となるかもしれないのだ。結果、金利が上昇すればそれだけ元金は減らないので、その分返済期間は延びることになる。この返済期間延長リスクに焦点を当て、顧客と相談し対応策が講じられれば「金利が上昇したら返済額が増えて支払えないかも……」という不安を解消できたことになる。

 最後の「短期プラ」も重要だ。変動金利はこの短期プラを指標に金利を決めている(とされている)。ただ、昨年12月に日銀が発表した「長期金利の変動幅をプラスマイナス0.5%へ拡大」のニュースで金利が上がる=変動金利も危ない、と考えている顧客も少なくない。実際、長期固定金利は上昇し、フラット35だと約0.4%も上昇した。しかし、長期固定の指標は「新発10年物国債」であり、変動金利の「短プラ」とは別ものだ。また、短プラは銀行の優良企業への1年以内の貸出金利だ。コロナ禍は不安があったが、今となっては優良企業への不安はそう大きくない。そのため、変動金利が上昇するリスクは断言できないが、そう大きくないことを伝えてもよいかもしれない。

 (2)融資審査承諾の予想と(3)必要書類とスケジュールについては、金融機関の担当者との情報交換で当たりを付けておき、情報収集をしっかりしておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。