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大言小語 「賃上げ」以前の話として

 記録的な物価高を背景に、春闘や賃上げが例年以上に注目を集めている。住宅・不動産業界でも、一部の例だが、大和ハウス工業グループやAPAMAN、いちご、大和財託などが月給や初任給等の引き上げを表明している。

 ▼ただし東京商工リサーチの調査によると、不動産業は賃上げの「22年実施率」「23年実施予定」が共に産業別の最低水準だった。また業界にかかわらず、賃上げ機運が見られるのは大企業が中心。大同生命保険の中小企業経営者アンケートでは、「賃上げする(した)」企業は34%にとどまる。業界ごとの事情や企業規模により難しい面があるのは重々承知しているが、中小不動産事業者にも極力前向きなアクションを期待したいところだ。

 ▼しかし〝それ以前〟の話として、気になるデータがある。訳あり物件買取プロ(運営・AlbaLink)の労働者調査によると、「ブラック企業の特徴」の1位は「残業代が出ない」。そして「ブラック企業で働いた経験」は71%に上る。重ねて考えれば、所定の時間外手当を払わない、つまり賃上げどころか法令すら守ろうとしない企業が、今も相当な割合で存在する実態がうかがえる。

 ▼ヘンリー・フォードの逸話を引くまでもなく、従業員とは労働者であり消費者だ。このご時世にその購買力を不法に抑制する企業は、住宅・不動産業界の発展も阻害するものとして、一層厳しい視線が向けられるべきだろう。