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大言小語 地震国の死角

 トルコ南東部で発生したマグニチュード7を超える2つの大地震が、トルコとシリア両国に甚大な被害をもたらしている。10日が過ぎた時点で死者数は4万人を超え、負傷者は少なくとも11万人に上るという。トルコ国内だけでも、倒壊もしくは修繕不能な建物が5万棟近くを数える。このほかの住宅をはじめとする建物に大きな被害が出ていることは想像に難くない。

 ▼世界各国も救援チームを送り込み決死の救助、救援活動が続く中で、248時間ぶりに被災者救出という心温まるニュースも伝わってきた。日本国内からも義援金を送る動きが民間で活発化してきている。大惨事に見舞われた両国に世界が救援の手を差し伸べている一方で、周辺国では紛争がいまだやむことなく、人命が失われ続けていることは無念としか言いようがない。

 ▼多くの人命が失われ、危険にさらされ、100万人が住まいを失ったことは人災の面も否定できない。早くもその矛先が、建物の手抜き工事や制度的な欠陥に向かい始めている。改めて日本が得るべき教訓は2つだろう。1つは、新耐震基準以前の建物が今もなお倒壊、損壊のリスクをはらんでいること。もう1つは、高度な建築基準が整備されている上に、適正な基準の運用が伴ってはじめてその恩恵が得られるということだ。いずれも当前のこと、と思い込むこと自体もリスクだ。地震国に死角はないのか、絶え間ない検証が必要だ。