売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(9) 違法建築物をあぶり出す「建築計画概要書とその見方読み方」

 不動産調査で必ず取得して内容を確認するのが「建築計画概要書(以下、概要書)」だ。取得理由は建築物の建築基準法等における許可条件を確認するためだ。その上で(1)現状との相違点、(2)前面道路の建築基準法上の取り扱いと中心線、この2点を把握する。

 概要書とは、建築工事をする際に特定行政庁へ提出する建築確認申請書の内容を概要としてまとめた書面だ。建築基準法等に適合していれば建築工事は許可され、建築確認済証(以下、建築確認通知書)が交付される。同時に概要書として第三者からの閲覧や交付で公開されるようになる。概要書ではない建築確認通知書の方が情報量は多く参考になるのだが、(1)所有者が紛失しているケースが多く(2)裏付けがほしいため、概要書の閲覧取得は必須と言えるだろう。

 概要書には建設概要の他、建ぺい率や容積率、道路幅員といった建築基準法関係、建築物とその敷地に関する事項、付近見取り図、配置図などが書かれている。サイズはA4が一般的で、枚数は平成の15年(03年)以降は10枚弱ほどあるが、昭和の年代だと2枚前後と少ないことが多い。

 (1)現状との相違点では、(1)建築物と敷地の大きさや形状範囲(2)敷地面積と建ぺい率、容積率(3)道路幅員と敷地の接道長さ(4)高さと階数、この4点を照らし合わせながら見ていく。概要書記載の数字や条件で建築工事が許可されたわけであるから、現状がこれらと大きく異なれば違法建築の可能性が高くなる。もし、大きく異なるなら増改築の概要書もないかを確認し、あるなら各数字や条件をチェックしよう。ないようなら売主へヒアリングしてみる。違反建築に多いのが建築確認後に許可なく建物面積を大きくする行為だが、違反建築は買主のローンが付かなくなる可能性があるので注意が必要だ。

 (2)前面道路の建築基準法上の取り扱いは多くの概要書に書かれているので必ず確認をする。前面道路が建築基準法第42条2項道路の場合、幅員が4メートル未満なら幅員4メートルを確保するため道路の中心線から2メートルほど敷地の一部を道路用地として提供することになる(セットバック)。その中心線も図示されているので、セットバック面積を測っておきたい。もし、調査する対象不動産に概要書がなく、前面道路がこの42条2項道路であれば、道路に面している他の近隣の建築物の概要書を取得すれば、中心線のおおまかな位置が分かりセットバック面積の目安が分かるようになる。以上、建築計画概要書の見方と読み方を述べた。

 不動産を正しく把握するために参考にしてほしい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。