マンション・開発・経営

リフォームによるCO2削減 大学と連携し効果定量化

 リフォームによるCO2削減効果を定量的に把握し、事業に活用する動きが活発化している。戸建て住宅リフォームに関しては、住友不動産が大学と共同でCO2削減効果を検証。マンションリフォームに関しては、三井不動産と長谷工グループがそれぞれ独自のアプローチで、CO2削減を行っている。30年、50年に向けた政府のカーボンニュートラルの取り組みもあり、不動産企業による既存住宅での取り組み活発化の背景となっている。(桑島良紀)

住友不、既存戸建て改修で47%削減

 住友不動産は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の清家剛教授、武蔵野大学工学部環境システム学科の磯部孝行講師と共に、既存戸建て住宅の改修における環境評価手法の確立を目的とした共同研究を開始した。この研究は、同社の戸建てリフォーム事業「新築そっくりさん」の建築再生手法を調査・分析することで、戸建て住宅の建築再生手法を網羅的に把握。その第1フェーズとして、21年12月から22年3月まで、改修によるCO2削減効果を検証。その結果、建て替えと比べてCO2排出量を47%削減する結果となった。清家教授によれば、今回の検証で、建物の状態で異なるが木造戸建て住宅で40~60%の削減効果が見込めるとした。今後は、2年程度をかけて既存戸建て住宅改修による長寿命化やZEH化、LCCM化を検証し、一定の成果としてまとめる。

 研究手法は、実際に改修する既存戸建て住宅に対して、360度カメラを使って3Dモデリング化し、構成資材をデータベース化したBIMを作成。改修前と改修中の資材の動きを細かく分析し、更地にして建て替える場合と比較して資材投入・廃棄物・施工などそれぞれのCO2排出量を算定した。

 加藤宏史取締役新築そっくりさん事業本部長は、昨年末から投入した高断熱リフォームプランについて「日本家屋においてはヒートショックの問題もあるので、従来から断熱性能について議論してきた。リフォームにおいても新築と同様の現行基準にまで高めたものを進めていこうということで(このプランを)始めた」。今回の研究結果に関しては、「耐震性能や断熱性能などの性能向上を図ることができ、結果としてCO2を大きく削減し、環境保全に貢献している。これまで定性的にしか説明できなかったが、定量的に説明できるようになった」とし、消費者へ訴求していく方針を示した。

三井不、マンション改修で

 マンションにおいても、既存住宅の改修によりCO2を削減する取り組みが進む。三井不動産は、既存躯体を再利用するリファイニング建築について、青木茂建築工房と協力し、東京大学大学院新領域創成科学研究科の清家剛教授と共同研究を行った。

 1971年に建てられた賃貸住宅で行っているリファイニング建築計画(東京都新宿区信濃町)を対象にCO2削減効果を検証。既存躯体の約84%を再利用することにより、既存建物を同規模に建て替えた場合と比較し72%削減できることが分かった。

 清家教授は、木造住宅は元々CO2排出量が低い木材を多用する一方、マンションで使う鉄筋コンクリートはCO2排出量が多い資材であるため、マンションのほうが再利用による削減数値が大きくなる傾向があるとしている。

長谷工、運営時の排出実質ゼロに

 大学連携以外の動きとして、長谷工グループは既存の社宅を賃貸マンションに全面改修して、建物全体で運営時のCO2排出量実質ゼロを目指す取り組みを開始した。「サステナブランシェ本行徳」(千葉県市川市本行徳)は、1990年に完成した社宅を6月下旬にCO2排出に配慮しつつ改修工事に着手。23年春ごろに竣工する予定だ。

 改修工事では、内外断熱性能の向上、LOW-E複層ガラスへの更新、LED照明への更新を実施。強化外皮基準およびZEH-M oriented相当を満たすことでBELS認証取得を目指す。オール電化に改修すると共に太陽光パネルを屋根、外壁、バルコニー手すりに設置するほか、純水素燃料電池の採用、再生可能エネルギー由来の電力とすることで、建物運用時のCO2排出量実質ゼロの実現を目指す。ここで得た知見を生かした提案を、ディベロッパーや既存マンション所有者に対して行う意向だ。