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取引関係の各書類 きちっと把握 ~畑中学 取引実践ポイント~ 複数所有者と変遷多い場合は丹念に 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(4)

 不動産の取引には印鑑証明書など数多くの書類が必要となる。どの書類がどのような意味を持っており、どう見て、いつ頃に必要となるのかを把握しておけば、顧客に勘違いや、無駄を生じさせないように的確にアドバイスをすることができる。各書類について伝えるべき、見るべきポイントについて述べていく。

 (1)印鑑証明書は、押印した印鑑が本人の印鑑に間違いないことを証明する書類だ。これは分かっていても、不動産取引では有効期限と枚数で戸惑うことがある。

 まず、有効期限だが金銭消費貸借契約(金消契約)時を基点に1カ月以内、抵当権設定登記日(融資実行日)を基点に3カ月以内としている金融機関が多い。金消契約時には期限内であったが、登記日の有効期限は切れており、顧客に慌てて再取得をお願いするようなことがないように、きちんと説明しておきたい。 必要な枚数もそうだ。金消契約用に1枚、所有権移転と抵当権設定登記用で計1枚だ。なお、金消契約時に抵当権設定登記用として1枚を金融機関が預かることが多いのだが、兼用を失念して顧客に慌てて「所有権移転登記用で、もう1枚お願いします」と言わないようにしたい。

 (2)課税証明書と納税証明書は、融資審査時に求められることが多い書類だ。ただ、名前が似ているため顧客の中には課税証明書が必要なのに、誤って納税証明書を取得してくる人がいる。しっかりと課税証明書は収入(所得)が記載されている証明書、納税証明書は住民税などの納税状況が記載をしている書類と案内をしたい。また、税務署で取得する納税証明書も要注意。顧客は納税証明書がその1からその4まであることを知らないため「どれを取ったらいいか分からない」と迷う人もいる。「その3」が必要なら、「その3をご用意ください」と伝えて印象付けたい。

 (3)登記済権利証と登記識別情報通知は、不動産に対して本人に所有権の権利があるかを確認する書類だ。名前は異なるが2つは同じもので、平成18年(06年)から20年ごろに前者から後者へ交付が切り替わっている。

 さて、その見方が重要だ。不動産の登記情報と登記済権利証の受付番号を照らし合わせながら、必要な筆数(不動産の数)と対応持ち分があるかを見るようにする。漏れがあると売買や登記ができないこともあるので、一つ一つ丹念に追っていこう。稀(まれ)に相続などで所有者の変遷が多い、持ち分での所有者が複数いる場合は、複数の登記済権利証等で受付番号を追うことになる。登記情報にチェックしながら追っていこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動をして現在に至る。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。

 著書には約8万部のロングセラーとなった『動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストでは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。