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〝ニッチ〟つかむ工夫様々 フレキシブルオフィス 高付加価値化と多様化進む

 コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大を受け、都市部を中心にシェアオフィスやコワーキングスペースなどフレキシブルオフィスの開設が活発化している。そうした中、大手資本に多く見られるスタンダードな仕様との差別化を図り、主に中堅・中小企業や新規参入企業が様々な工夫で付加価値を高めた施設を展開する事例も増加。〝ニッチ〟なニーズに対応すべく、フレキシブルオフィスの多様化が進んでいる。(佐藤順真)

 レンタルオフィス事業などを展開するWOOC(東京都品川区)は12月22日、東京都港区で「BIZcomfort ザ ロイヤルパークホテル アイコニック東京汐留」を開設する。同ホテルの高層階に位置し、「東京の夜景を愉(たの)しむ天空のコワーキングスペース」と銘打つ施設で、眺望を強みとして〝都市型ワーケーション〟によるリフレッシュ効果を訴求する。

 作業環境の快適化は、多くのフレキシブルオフィス供給企業の重要なテーマとなっている。東電不動産(東京都台東区)が11月に開設した「WORKING PARK EN」では、「集中とリラックスの共存により健康的に働けるワークプレイス」を目指し、公園やグランピングをモチーフとしたデザインを採用した。

 デザインによる付加価値については、サンフロンティア不動産(東京都千代田区)による積極的な取り組みに注目したい。4月に立ち上げた「+SHIFT」ブランドでは、「『働き方』をデザインする」という考えの下、設計デザイン会社のドラフト(東京都渋谷区)に内外装のデザインを全面的に依頼。個性的で創造性を刺激する空間づくりを図っている。

他業種の強み活用も

 ハード面だけでなく、ソフト面で訴求力の向上を図っているケースも増加傾向が見られる。11月にプレゼンス(東京都中央区)が東京・銀座に開設した「タイムリッチ銀座」では、アルコール飲料の飲み放題サービスや会員向けオンラインサロンにより利用者間の交流を促し、人脈構築の場としての機能を持たせた。

 ソフト面の付加価値は、他業種からの参入企業が競争力を高める手段でもある。保育施設事業を展開するスタイルクリエイト(福岡県福岡市)が11月に開設した「CREATIVE ROOM」(同)は、自社の運営する託児ルームと一体型の施設で、共働きの子育て世帯などのニーズを反映した施設だ。

22年も個性重視の予想

 こうした動きの背景には、フレキシブルオフィス施設の増加に伴う需給バランスの変化があると思われる。新型コロナの拡大直後は、リモートワークの急速な普及によりフレキシブルオフィスへのニーズが高まっていったものの、供給が需要に追いつくにつれ競争力の重要性も高まってきているという構図だ。

 サンフロンティア不動産リプランニング事業部長の小田修平執行役員は「+SHIFT」の事業説明に際し、「大手が手掛ける、中心的なニーズを反映した施設と異なり、我々はその外側(にある需要)に向け明確なコンセプトの施設を供給していく」と語り、独自の工夫を強みとして打ち出す方針を示している。

 デザイナーズオフィス事業のヴィス(大阪府大阪市)が12月8日に公表した「オフィスデザイントレンド予想」によると、22年は更にオフィスの多様化が進み、個性やオリジナリティを重視する傾向が強まると見られる。