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社説 政府の住宅取得支援に社会的意義 住宅企業は新たな時代の要請に対応を

 大手住宅メーカーの受注は回復傾向が続いている。先頃、公表された積水ハウスの22年1月期第2四半期決算では、戸建て住宅や賃貸住宅がけん引役となり、半期として過去最高の売上高となった。注文住宅に関しては、在宅勤務が普及して広さを求めて3階建てが伸びたことや、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)といった環境性能が高い住宅が定着したことなどにより1棟当たりの受注単価が上昇したことが売上高上昇の要因の一つとして挙げられる。コロナ禍で景気がよいと言えない中、注文住宅の受注単価の上昇を消費者が許容している要因は、低金利と住宅ローン減税の2つだ。

 まず、1つ目の低金利は、世界的な金融緩和によるものだ。住宅ローン金利は年1%を切るものも珍しくなくなった。都心の分譲マンションを中心に住宅価格に上昇傾向が見られる中、注文住宅を建てられる人は金利が低い今のうちに建てておこうという心理が働いても不思議はない。低金利に関しては、国際金融市場の動きに左右される。影響力が大きい米国で、年内にもテーパリング(量的緩和縮小)が始まるとの報道もあり、いつまで今の低金利が続くか分からないといった事情もある。もう1つの要因は、住宅ローン減税だ。これは、ローン残高の1%を所得税や住民税から控除するというもので、減税期間13年間という内容だが、注文住宅に関しては9月末までの契約で適用期限を迎える。期間限定の優遇措置であるため、利用できる人は多少無理してでも注文住宅を建てようと思うだろう。

 こうしてみると、注文住宅の受注環境の足元は危うい。これまでコロナ対応に追われて本格的な経済対策がおざなりになっていたが、新政権にはコロナで傷んだ経済を回復軌道に乗せる経済対策を期待したい。住宅・不動産業界団体が税制改正要望を明らかにしているが、コロナからの経済浮揚策の一環として、現行の住宅ローン減税の延長・拡充を求める声が上がっている。住宅投資の内需を支える効果は、依然として重要だ。短期的な経済対策という側面だけではない。政府が目標とするカーボンニュートラル達成のためにも、既存ストックの省エネ性能向上に建て替えが必要なことを考慮すれば、中長期的にも注文住宅を含む住宅取得支援には社会的意義があると強調しておこう。

 ただし、経済対策として住宅取得支援を生かすことができるのは、新たな社会の要請に応えられる住宅メーカーだけだ。政府による住宅取得支援の目的は、住まいの脱炭素化やニューノーマルなど新たな社会の要請が背景にある。新たな社会の要請に合わせた住まいの提案には、住宅メーカーの規模の大小は関係ない。新たな時代の要請に応えられる住宅メーカーなのか、新政権が発足するまでに自らを問い直す必要がある。