定期借地権再考(上) 注目集める地代前払い方式 〝期間70年〟で商品力アップ 等価交換マンションとセット

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老朽化したビルの活用に悩む地主も多い(写真はイメージ)
コロナを機に住まいや住まい方を見直す機運が高まる中、定期借地権も選択肢の一つとして再考され始めた。若い世代を中心に「所有から利用へ」と価値観が変化していることも背景にある。長期契約となる定期借地権で事業化するには地主の理解が不可欠だが、ここにきて「地代一括前払い方式」が地主説得に大きな力を発揮し始めている。

 「近年、駅前の一等地や都心部で、老朽化したビルを所有する地主や法人が期間70年・地代一括前払い方式による定期借地権マンションに建てる案件が急に増えてきた」

 こう話すのはタクトコンサルティング顧問で税理士の本郷尚氏だ。

 「個人地主の場合、先祖代々の土地を決して手放したくはないし、離れたくないと思う気持ちが強い。とはいってもなんらかの土地活用をしなければならない人が多い。しかも借り入れはしたくない。一方で、不動産ディベロッパーは用地取得難の今、一等地を仕入れる手段を模索している」。そうした双方の状況にマッチしているからだ。

 ポイントとなるのが地代の一括前払いと70年という期間だ。

 例えば駅前一等地で時価20億円の土地ならば、そこに70年の定期借地権を設定することで地主には前払い地代として15億円が支払われる。地主はこの一部を立ち退き費用1億円、解体費用2億円と相殺し、残った12億円(15億円―3億円)で新築されるマンションと等価交換する。しかも地主には優先取得権が与えられるので、自宅として使用する最上階や、投資用として取得する住戸を自由に選ぶことができる。自宅として住むことができ、残りは賃貸として貸し出せば家賃収入を得られる。土地を売却することなく、住み続けることができる。一方、ディベロッパーは、現金支出としては実質3億円で、都内好立地でのマンション事業が可能となる。

 本郷氏は、「定期借地権ができて約30年経つが認知度はまだまだ低い。まして16年前から始まった地代一括前払い方式については業界関係者の間でも知らない人が多い」と話す。

 当時、新・定期借地権とも呼ばれ注目を集めた地代前払い方式は、地主側の前受け地代は権利金のように一時に課税されることなく、毎年均等に収益計上することができる。一方の借地人(事業者)にとっても前払い地代は毎年均等に経費化できるという大きなメリットがある。

 「老朽化で収益力が落ちるビルを建て替えたくても資金はなく、立ち退き交渉の仕方も分からないで途方に暮れているオーナーからすれば、金銭負担ゼロでマンション建設までの業務はすべて大手不動産会社がしてくれる前払い地代方式はまさに救世主。東京都心の一等地を持っていることの強みを最大限に生かした手法であり、魔法でもなんでもない」と本郷氏は語る。

 定期借地権は創設時に〝期間50年〟でスタートしたため、地主には長く、住宅を購入するユーザーからは短いという印象を拭えなかった。購入者は自分が一定期間暮らした後に中古住宅として流通市場に出した場合、残り期間が例えば15年しかなければ買い手が付かないのではと不安に感じるからだ。「それが今は〝70年〟が主流になったことで、市場での商品力が強まったことは大きなポイントだ」と本郷氏は指摘する。地主にとって70年は更に期間が長くなるが、「よく考えれば70年も借り上げてくれて、しかもその間、無借金で取得したマンションからの家賃収入が入ると思えば十分納得できる話」(同氏)。地主に対する説得力は大きい。

地方都市では

 こうした地代前払い方式による定期借地権の活用事例は、東京とは事情が異なる面があるものの、地方都市でも活用されている。全国定借機構ネットワーク組織渉外理事の速水英雄氏はこう語る。

 「全国的に公有地定借物件は地代前払い方式が多い。民有地では沖縄が目立つ。沖縄で数多く定借マンションを手掛けている地元ディベロッパーは全物件で地代前払い方式を採用している。沖縄では地代前払い一時金に対して金融機関が融資をしてくれていることが大きい。内地では住宅金融支援機構以外は難しいようだ」

 資金力のある大手ディベロッパーと違い、地方の中堅不動産会社が地代前払い方式を活用するためにはその一時金への融資が金融機関から受けられるどうかがポイントになる。ちなみに、住宅金融支援機構でも月に数件、前払い地代に対する融資事案があるという。

 また速水氏は、「東京のマンション購入検討者は、全期間の地代を前払い一時金として払っても、もともと住宅価格が高いのであまり気にならないだろうが、地方では全地代のせいぜい2~3割ぐらいが限界になる。それ以上になると販売価格が割高になり事業化が難しい」とも指摘する。

地主説得の武器に

 福井県小浜市の平田不動産も近年、定期借地権事業を積極化している。同社の平田稔社長によると、地代前払い方式は地主の解体費用捻出のために利用することが多いと言う。「好立地の土地に老朽化した建物を持つ地主は、建て替えたいが解体費用が出せず、そのまま放置している案件が多い。そこで、借地人が解体費用相当分+固定資産税相当を前払い地代(7年分)として払う提案をしたところ事業化できた。地主には8年目から地代が入るというスキームで地主にも納得してもらえた」と話す。

 住まい方の多様化を背景に定期借地権再考の動きが活発化する可能性がある。

       (井川弘子)((下)は次号6面に掲載予定)

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