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大言小語 生きた言葉

 13日間にわたり熱戦が繰り広げられたパラリンピック。その父と呼ばれているルートヴィヒ・グットマン博士が残した言葉はあまりにも有名だ。「失ったものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」。また「今日という日は、残りの人生の最初の日である」という言葉も心に残る。これは薬物中毒患者救済機関の創設者のチャールズ・ディードリッヒの言葉だ。人は生きた言葉に勇気をもらう。

 ▼最近ベンチャー企業を取材することが増えたが、その経営者の多くは自分なりの夢を持っている。電動キックボードの普及を目指す社長は「街じゅうを〝駅前化〟したい」と夢を語った。家族信託の普及に努める司法書士は、「日本に普及すべきは〝家族会議〟だ」と思いを語っていた。

 ▼自分の夢を自分なりの言葉で語れる人はそう多くはないと思う。「危機の時こそチャンス」などよく耳にするが、心を動かされるほどのインパクトはない。その人が仕事の中から絞り出した言葉こそ感動を与えるのではないか。

 ▼働き方改革が進む今、在宅勤務や副業、ワーケーションなど仕事を巡って様々な価値観が議論されている。自分にとっての仕事とは何か。「今日が人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことは本当にしたいことなのか」。これはスティーブ・ジョブズの言葉。この問い掛けに素直にうなづける人はどれだけいるだろうか。