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600×三井不、コスモスイニシア、平和不 オフィス共用部の工夫広がる 「場所の付加価値」向上、着々と

 コロナ禍によりオフィスの存在意義が見直される中、ワークスペースをはじめとした専有部だけでなく、共用ラウンジなどの高付加価値化にも力を入れる動きが進んでいる。あえてオフィスに出勤するに見合う〝価値〟の提供へ向け、工夫を凝らす各社の事例を追った。

 三井不動産の運営するオフィスビル「コイルテラス」(千葉県柏市)では、このほど600(株)(東京都千代田区、久保渓社長)の提供する無人ストア「Store600」を共用ラウンジに設置した。オフィス共用部での導入は「コイルテラス」が初めて。

 同設備の強みは、一般的な自動販売機と異なり、商品ラインアップの自由度が高いこと。そのため個々の設置場所に合わせた商品の提供により、施設側の方針や利用者のニーズを反映しやすい。同オフィスでは、コンセプト「SMART&Well-being」の体現を目指し、低糖質の軽食や飲料などを充実させた。

 600法人事業本部の佐藤雅江副本部長は、「陳列商品だけでなく、デザインも重視した設備。ウェルネス環境を重視したオフィスビルとは相性がよく、モノを売るだけでなく〝場の価値〟の向上を目指している」と方針を語る。

コンセプト体現の場として

 働く人の健康は以前からオフィスにとって課題の一つであり、コロナ禍を受けて更に注目度が増したテーマ。このほど開業したコスモスイニシアの「クロスシー東日本橋ビル」(東京都中央区)も、健康経営の推進を主軸の一つとして開発された賃貸オフィスビルだ。同オフィスでは、屋上に休憩用ベンチだけでなく運動器具等も設置。専有部の機能性・快適性向上に加え、共用部においても限られたスペースを効果的に使い、〝オフィスビル〟で働くことに付加価値を持たせるよう工夫を凝らしている。

 またオフィスという〝場〟の力で、業務の成果向上を促すアプローチも広がっている。7月12日に平和不動産が開設した「XPORT日本橋兜町」(東京都中央区)は、そうしたコンセプトを強く打ち出した賃貸オフィスビルだ。同物件は、同社が新たに立ち上げたフレキシブルオフィス事業「XPORT(クロスポート)」の初物件。「新しいアイデアやビジネスの創造といった知的生産性を高めるオフィス」(同社)を目指し、内装デザインやBGMに力を入れ、業務をアシストする空間の提供を図っている。

 ここに挙げた事例以外でも、オフィスビルにおける付加価値向上を目指したアプローチは数多い。中でも、建物のコンセプトやディベロッパーの意図が直接反映される共用部の工夫は、そのオフィスの特色を特に強く体現する場所と言えるかもしれない。