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三菱地所「デジタルビジョン」を策定 大丸有、みなとみらいなどで実践 物理・仮想超えたつながり創出へ

 三菱地所は6月23日、DX(デジタルトランスフォーメーション)による新たな街づくりに向けた「三菱地所デジタルビジョン」を策定、発表した。大手町・丸の内・有楽町(大丸有)をはじめ、横浜・みなとみらい地区や大阪・うめきた地区など、同社が手掛ける街づくりプロジェクトの土台となる思想と位置付ける。

 同ビジョン策定の背景には、コロナ禍の影響もあり、OMO(デジタルとリアルの融合)が加速しているという現状認識がある。住宅やオフィス、商業・宿泊施設など多様なアセットを保有する同社だが、今後一層「物理的な顧客接点がすべてではなくなる」(DX推進部太田清部長)ため、従来の手法のままでは顧客の一面にしかアプローチできないという危機感だ。

 そこで同ビジョンでは、不動産を中心とした物理的な領域と、ネットワーク上の仮想空間の双方における顧客対応を目指す。大野郁夫常務はその方向性を「リアルとデジタルの垣根を超えて、これまで以上にオープンなつながりを生む仕組みづくり」による街への愛着の醸成と表現した。

体験価値向上のサイクルを

 同ビジョンの柱は、「オンライン・オフライン双方の活用による課題解決」「広範なデータの分析・活用による提供価値のアップデート」「オープンな連携と多様な主体の参加による街の協創の促進」の3要素。

 こうしたビジョンの具体化の一つとして、同社はグループによる事業や周辺エリアで活用できる共通認証基盤システム「Machi Pass(マチパス)」を構築。元々は同社グループの事業限定で利用できるシステムだったが、連携する外部企業等にも対象を拡大し、街のサービスにおけるワンストップ窓口としての機能を目指す。

 加えて、個人が街に関わることで得られる「意味」を伝えるため、デジタルによる「体験の再構成」も図る。こちらも同社グループの施設等に限らず、エリア内の店舗や交通機関、コミュニティ等の情報を集約・可視化し、街を訪れる動機やメリットの周知を進める施策だ。

 個別施策としては、「運搬ロボットによるリアル店舗間のコラボ」「街の空きスペースのマッチング管理」といった事業を計画中。更に、こうした取り組みや外部との連携で得られたデータをサービス等にフィードバックすることで、持続的に顧客体験のアップデートを進めていくサイクルの構築も目指す。

 今後はまず、大丸有やみなとみらいなど、同社の手掛けた主要な開発エリアで事業の具現化を図っていく方針。将来的には、同社の手掛ける商業施設や空港などにも展開していくほか、周辺地域とも連携して地域価値の向上に寄与していく考えを示している。