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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇4 コロナ禍こそ、助け合う 一般社団法人日本シェアハウス協会代表理事 山本久雄氏に聞く

コロナ禍で〝おうち時間〟が増え、住まいや住まい方についての議論が活発化している。一戸建てやマンションの選び方にも変化が出始めたようだが、ここではもう少し広い観点からこれからの住まいと住まい方について考えてみたい。そもそも住まいとは何か。それを考える糸口として、今回はシェアハウスを取り上げる。日本シェアハウス協会代表理事の山本久雄氏に聞いた。

 ――コロナ禍によるシェアハウス業界への影響は。

  シェアハウスの入居者にはもともと女性が多いが、コロナで仕事をなくしたり、減収などの経済的打撃を受けているのも女性なので、その比率が一段と高まっている。

 一方で、入居していた女性が帰郷したり、安価なハウスへ住み替えるなどで退去者が増加したのも事実。ここにきてようやく新たな入居検討者からの問い合わせが出始めており、ホッとしている。感覚的にはコロナ禍前の8~9割程度には回復している。

 ――集団生活は感染しやすいと敬遠されなかったか。 

 その点が一番心配だったが玄関に消毒液の設置や、リビングに紫外線消毒器を設置するなどの感染対策を講じた結果、安心感が高まった。感染は見ず知らずの他人同士では不安だが入居者同士の関係が強いと信頼感があるので共同生活が継続できている。

自殺者を出さない

 ――コロナ禍で若い人の自殺が増えている。

 単身者や母子一家の自殺報道が増え本当に悲しい。幸いシェアハウスでの自殺者は出ていない。仕事を失うなど経済的問題を抱える入居者も少なくないが、みんなで鍋パーティやBBQを楽しんでいる。食材の共同購入で食費の負担が軽減できる。現金負担が厳しい人は買い出しや料理の片付けで労務を提供するなどシェアハウスならではのワークシェアで助け合い、励まし合っています。

 ――新規事業は。

 空き家の活用相談などが激減した。コロナ前の約1割程だ。つまり、新規開業案件が減少している。シェアハウス業界への参入相談は、個人も宅建業者も異業種法人もすべて激減している。コロナ前までは多かった自治体からの空き家対策や移住・定住政策の相談も大激減といっていい。 ――テレワークの普及で二地域居住やワーケーションの芽も出始めている。東京からの移住者や脱出組の受け皿となるような新しい仕掛けをつくることはできないか。

 当協会はコロナ禍前から地方への移住・定住向け住まいとしてのシェアハウスも推進しているので、今後更にパワーアップしていく。

 ――日本ではシェアハウスを前提にした新築物件があるが外国にはないらしい。日本独自のシェアハウス文化が育つ可能性があるのでは。

 日本は単身世帯の比率が全世帯の35%で、類型別では最も多い。これはどう考えても異常だ。しかも推計だと30年頃には全世帯の40%近くになる。これで豊かな地域社会が育つとは思えない。我田引水のつもりはないがシェアハウスには今後の日本の住まいのあり方を考えるヒントがたくさん隠されていると思う。

 ――国土交通省もシェアハウスを応援している。

 国交省はシェアハウスを空き家活用の主要メニューとしている。空き家を戸建て賃貸するよりも、シェアハウスにするほうがオーナーのメリットが大きいと同省のシェアハウスガイドブックに記している。ガイドブックの作成には当協会も協力させてもらった。

  ――シェアハウスは地方創生、地域再生に貢献するという意味でも期待が大きい。

 〝人生100年時代〟の住まい方として、国交省からも期待していただいている。  直近では国交省・環境省・経産省3省合同の脱炭素政策の中でも、省エネ型のライフスタイルとしてシェアハウスが掲載されている。地球温暖化防止という人類の最重要課題の解決に向け当業界が貢献できることは誇りでもある。シェアハウスの普及に全力を尽くしたい。