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特別寄稿 スマートホーム 暮らしに与える変化 全3回第1回  スマートホーム先進国  アメリカの現状と日本での普及 株式会社アクセルラボ 代表取締役 小暮学

スマートホーム先進国  

 「アメリカで爆発的に普及したものが数年遅れて日本で普及する」という言葉があります。調べてみると、この〝数年〟というのは、プロダクトの性質やローカライズするまでの年数にもよりますが、概ね3~5年程度のことを指すようです。ただし、グローバル化が進み、これまでよりも多くの社会的課題が出てきた昨今では、早い段階で日本に広まるプロダクトも増えてきています。

 あらゆるもので先進的なアメリカは、当然スマートホームでも先進国となっています。現在の普及率はDIYを含めて35.6%を超えています。アメリカでのスマートホーム化の大きな流れに影響され、日本の住宅もスマートホームが標準化されていくとわれわれは考えています。

アメリカでの歴史と今

 人々の生活を技術を使ってアップデートしていこうという流れは昔からありましたが、それが現在のようにスマートホームという言葉で語られるようになったのは98年頃からだとされています。

 アメリカでのスマートホームの始まりは、「スマートリモコン」と「サーモスタット(温度調節機)」で、そこに音声操作が可能なスマートスピーカーが加わることで、簡易的なスマートホームが流行りました。

 しかし、現在にも続くスマートホームの爆発的な普及の立役者となったのはデバイスメーカーではなくプラットフォーマーでした。ソフトウェアの力で住居全体をコントロールしようと考えた彼らのアイデアが、アメリカのスマートホームのスタンダードになったのです。そんなプラットフォーマーは現在4社に集約され、彼らとデバイスメーカーの働きにより、年間700万戸の住宅がスマートホーム化されていくと予測されています。

 さらに、コロナ禍やSDGsの影響も受けてスマートホームは、さまざまな課題を具体的に解決していくための手段として認識されていきました。

 エネルギー消費の管理、ホームオートメーションによる生産性の増加、スマートロックやセンサーを利用したホームセキュリティなど、アメリカは社会情勢の追い風もあり大幅な導入が進んでいます。実際、アメリカのスマートホーム事業者であるVivint Smart Homeは、20年の年末に前年比28%の加入者増加を果たしています。

 24年には、アメリカの住居の約半数がスマートホーム化すると予測されています。「やっと半分か」と思われるかもしれませんが、ハイテク製品の世界では普及率が16%を超えることが最も難しいとされており、それを超えて普及した製品は驚くほど一気に一般化していきます。すでにアメリカ全土の住宅がスマートホームになっていくことは不可逆的な流れとなっています。

日本で爆発的普及は?

 海外の調査会社のレポートによると、スマートスピーカーやスマートリモコンを自宅に置くなどの簡易的なDIYも含めると、日本でのスマートホームの普及率は19年時点で12.6%。それが26年までに41.7%に達すると言われています。日本もアメリカ同様、コロナ禍への対応やSDGsへの適合などの課題を抱えていますが、日本特有の問題は少子高齢化社会の本格的な到来です。

 これまでよりも少ない労働力人口で高い生産性を生み出し続けるためには、ホームオートメーションによる家事労働時間の削減が不可欠ですし、核家族化で進む独居老人の増加にはスマートホームによる「見守り」が最適です。

 コロナ禍によって家の快適性を見直す人も増えましたが、今後は日本全体の問題解決のために1つ1つのデバイスがスマート化するだけでは足りず、家全体をコントロールできるソフトウェアが必要になります。「あったらいいな」ではなく「なくてはならない」、それがスマートホームです。私たちの暮らしが次のフェーズを迎える未来は、すぐ近くまで来ています。