再び街から人影が減った。遠出もなくなり、街の様子を知る機会は身近な行動の範囲にとどまるが、シャッター通りのように静まり返った映像がテレビに映し出される近郊、郊外の商店街も同じく人影はまばら。とりわけ休業や営業時間の短縮を名指しで要請された飲食店の危機的状況は見るに堪えないが、これにあらがうようにテイクアウトに活路を求める店舗が注目を集めている。
▼コロナ禍が広がる以前には、オフィス街でここ数年急速に広まったキッチンカーが活況を呈していた。ランチ時ともなると実店舗を上回るほど客が行列をつくる人気のキッチンカーも少なくなかった。一方で当時、苦戦を強いられたのが実店舗だが、奪われた客足をどうにか呼び戻そうとテイクアウトランチを販売する動きが実店舗の間でも広まった。お弁当と共に「社内でテイクアウトランチ」は時代を象徴するランチブームとなった。
▼しかし希望のテイクアウトもコロナ禍に飲み込まれ、黄色信号がともる。ワクチン供給を目前に、もう一息という最悪のタイミングで、罰則規定を盛り込んだ新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正された。休業、営業時間変更の命令に従わない場合は過料を科す厳しい内容だ。傷に塩を塗る格好となった改正法が更なる悪循環を招かないか予断を許さない。悪化の一途を辿る経済情勢に拍車を掛けることだけはあってはならない。
