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大言小語 願望ではなく信念を

 よくマスコミは〝悲観(報道)好き〟と言われるが、それは大衆の気分をあおりがちということだ。哲学者のアランも「悲観主義は気分からくるもの」と言っている。現時点で今年が昨年よりもいい年になると見ている人は少ない。そこに付け込むマスコミ報道は確かにある。 

 ▼一方で、今年は史上空前の株式ブーム、不動産ブームになるという見方もある。2月か3月には始まると言われるワクチン接種の効果が出れば、東京オリンピック・パラリンピック開催のめども立ち、それまでの暗いムードが一変するからだ。日銀が昨年末に発表したところによると市中に出回っているお金は118兆円と過去最高。個人金融資産も1900兆円まで伸びている。  

 ▼アランは気分などの感情を否定し、強い意志による楽観主義を提唱した。しかし、コロナ禍を生き抜く今の我々には強い意志による悲観主義こそ必要ではないか。ワクチン効果でムード一変を期待するのは単なる願望に過ぎない。強い意志で悲観主義を克服してこそコロナの先が見えてくる。

 ▼願望と言えば、コロナの啓示を受けて社会変革が起きると見るのもただの願望だと言われがちである。しかし、冷静に大した変化は起きないと見るのも実は願望ではないのか。ならば願望でも推測でも展望でもなく、社会はこうあるべきだという確かな信念を持って新しい年をスタートしたい。