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社説 熱高まる不動産投資 生活支える確かな手立てに

 18年5月に、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズが倒産し、多くの投資家が被害を受けた。その背景にはスルガ銀行によるずさんな融資の実態があったが、スマートデイズが投資家にシェアハウスを販売する際に、サブリースの利点だけを強調し、甘い勧誘を繰り返していたことも問題となった。それが12月15日施行予定の賃貸住宅管理業法におけるサブリース分野の規定につながったともいわれている。

 一方で、この事件によって一般サラリーマン層の不動産投資に対する関心の高さ、需要の強さも明らかになった。その背景にあるのが将来不安だ。しかも問題は不安を抱いているのが高齢者だけでなく、働き盛りの世代、更には若者層にまで広がっているという点である。国民生活センターに寄せられた投資用マンションの相談件数を見ても、20代からの相談は年々増加し、18年度には13年度比2.5倍となっている。特に〝老後資金2000万円問題〟以降は、不動産投資熱が一層高まっていることも事実だろう。

 ここ数年、「働き方改革」が叫ばれている。これまでの時間管理から実績主義・成果主義へと移行し、更にはたとえ今大企業に勤めていたとしても、生涯の賃金や退職金が保証される時代は終わりを迎える様相だ。そこでサラリーマンとしては、生活を支えるためには収入の手立てを複数化しておきたいという気持ちが起きるのは当然だろう。その一つの手立てとして、不動産投資は今や重要な社会的役割を担っている。しかも、近年はインターネット上で手続きを完結できる不動産クラウドファンディングが普及し、小口資金でも投資できる商品が増えている。

 今後はこうした商品に対して、個人投資家が安心して投資できる環境整備をいかに進めるかが課題となる。行政による規制や、新たな法整備が必要になるとの見方もあるが、それが仕組みの煩雑さを招き、市場の発展を阻害することだけは避けなければならない。

 そこで、改めて言うまでもないことだが、市場の発展にとって最も必要なものは規制ではなく、事業者側の倫理観(コンプライアンス)だという点を思い起こすときである。顧客に対して甘い言葉で勧誘をすることが企業を発展させるのではなく、まずは顧客の利益を守る姿勢を徹底し、社内のコンプライアンスを確立することが結局は会社の発展につながるという当たり前のことに気付くことこそ重要だ。SNS全盛の今、消費者が不利益に感じることがあれば、それは瞬く間に拡散され、企業業績に多大なダメージを与えかねないことにも留意すべきだ。

 こうした時代だからこそ、個人が抱える将来不安を悪用するのではなく、国民が抱える深刻な課題解決に一企業としてどう貢献するか、それが不動産業界全体の信頼につながっていく。