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大言小語 定額制の働き方

 映画や音楽、洋服、食事、家電や婚活までも、今や「サブスクリプション」とうたえば、多くの利用者を取り込める勢いだ。トヨタ自動車のサービス「KINTO」(キント)も月額の一定料金で新車を3年間楽しめるものの、その低調な利用状況に赤字が続き、対象車種の追加でテコ入れを始める。

 ▼ただ、一定の成果は得ているようだ。車離れの傾向にあると言われる若年層に対して、アプローチできているという点だ。新車を購入すれば、車両本体価格に加えて、保険料や登録料、メンテナンスまで多額の費用が掛かる。それらのすべてが定額の〝コミコミ〟なのであれば、利用したいと気持ちは動く。

 ▼不動産業界でも、マンションや空き家の活用、調度品などで同様なサービスが誕生している。戸建て住宅の入居でも広がれば、持ち家派と賃貸派の論争が終息しようというものか。所得が伸びづらい時代。無理に住宅ローンを組むよりも〝お試し〟の定額制で居住して、いずれは購入、という選択肢も増えるかもしれない。

 ▼最近の給与も定額制の様相だ。働き方改革で残業代が抑えられ、基本給プラス各種手当の一定額に。しかし、どれだけ顕著な成果を出しても、年棒制みたく定額で給与アップもなければ、働く意欲は削がれる。トヨタのテコ入れのように、企業や労働者も仕事に魅力を加える工夫が必要となる。もっと、仕事を楽しめるように。それが本当の働き方改革だろうか。