総合

大言小語 スキルが原動力

 重要事項説明の1項目にインスペクションが位置付けられて早1年超が過ぎた。不動産取引の現場では徐々にそのすそ野を広げ、取引当事者のみならず仲介業者からも頼りにされる場面が増えていると聞く。

 ▼米国で普及したインスペクションが国内で導入されたのは、流通最大手がインスペクションの専門会社を立ち上げた2000年初頭にさかのぼる。黎明期の当時は広がりにこそ欠けたが、最大手の導入でにわかに関心が高まった。その後、中古住宅の流通活性化へ政策転換されたのを受けて、2009年にNPO団体が専門の資格試験制度を創設した。これを受けてインスペクションの重要性が改めて認識されはじめ、その後インスペクター育成も加速した。足掛け20年でようやく不動産流通市場で市民権を得たといってよいだろう。

 ▼過去10年間に3000件を超すインスペクションを手掛けた熟練インスペクターは言う。自分たちの仕事は、不具合を見つけ、どう対処すべきかを報告することだが、これら技術的な部分は全体の4割に過ぎないと。6割は事実に基づき依頼者の不安をいかに取り除くか、問題を解決に導けるのかだと語る。制度の有益性は言うまでもないが、スキルを長年積み重ねてきた実績が市民権を得た原動力であることは明らかだ。安心な取引を提供することは、仲介会社と軸は同じ。不動産取引の潤滑油として、インスペクターの一層の活躍が期待される。