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社説 消費増税対策は万全だが 住宅価格高騰に対策を

 2019年が明け、住宅・不動産業界の各団体が新年会を行っている。全体的に業績が良く、景気も幅は小さいものの上昇傾向にあり、各会場とも元気で明るいムードに包まれている。

 特にその要因となっているのが、19年度税制改正大綱と予算案の内容であろう。各団体とも、「我々が要望してきたほぼすべての点が認められた」として、100点満点との評価をしていた。何といっても最も評価が高いのが、消費増税対策だ。増税前の駆け込み需要を抑えるとともに、反動減を少なくし、平準化させるための措置として、多くの項目が盛り込まれた。

 住宅ローン減税の控除期間の10年から13年への延長、「次世代住宅ポイント制度」の創設、既に概要が決定している「すまい給付金」の拡充など、万全の備えを政府は用意した。今年の新年会では各団体の長や来賓もこの点を強調。中には、「消費増税後に(住宅を)購入するほうが明らかに得」「駆け込み需要の心配よりも、買い控えを心配したほうがいいのでは」とジョークを交えながらも、真剣に話す人もいて、業界の何人かに話をしても、「駆け込み需要はほとんど起きないので反動も起きない。増税後の需要が伸びる可能性もある」と予測している人が多かった。

 ただ、そうした意見も一定の条件があるという。それは、「これ以上住宅価格が高騰しないこと」だ。増税する分よりも、戻ってくる額のほうが多ければ、需要は伸びる。しかし、そもそもの住宅価格が高ければ、ローン金利が低かろうが、所得税がバックされようが、食指は動かない。現在、都心に建設されるマンションの価格は1戸1億円を超えるのがザラで、一次取得者層向けでも7000万円を超える。これは、一般サラリーマンが購入できる金額ではない。

 これまで敬遠されてきた、足立、葛飾などの城東のマンションが、都心への交通網の整備などにより見直され、人気となっているが、ここにも価格高騰の波がしのび寄っている。また、大都市の周辺県に建てられるマンションも2000万円台から3000万円台に上昇しているものもあるほか、既存戸建て・マンションの価格上昇も続いている。せっかく、対策を整備しても、購買意欲が減少しては本末転倒だ。そろそろ歯止めを設けないと、逆に景気の足を引っ張りかねない。

 少子高齢化が猛スピードで進行する中、税制の優遇制度などで物件が売れる売れないというのは実は瑣末なことで、方針を抜本的に変える必要があるのではないか。例えば、千葉県のユーカリが丘のような、自治体と連携して、行政サービス豊かな、郊外での新しい街づくりが進めば、若い世代からお年寄りまで安心して生活ができる。都心、駅チカに捉われない、ゆったりとした住生活に目を向ける、そうした将来が見られる一年でありたい。