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社説 目まぐるしい1年の始まり 新たな需要に期待高まる

 住宅ローン減税の適用期限延長が盛り込まれた19年度の税制改正大綱の年末の決定を受けて、新しい1年がスタートした。年明け早々に開かれた不動産協会と不動産流通経営協会の合同賀詞交歓会では、「駆け込み需要と引き上げ後の反動減を抑え、住宅市場の安定に注力する」という菰田正信不動産協会理事長の力強いあいさつが聞かれた。

 前回の引き上げの時は、その反動減が生じて長く厳しい市場環境を乗り越えてきただけに、増税対応策については多くの業界関係者が胸をなでおろしたに違いない。しかし、現時点ではレールが敷かれただけに過ぎない。対応策のメリットを受け止めるだけの消費者マインドが続いていくのか、高止まりしている住宅価格にどれだけの需要がついていけるのか、現時点では予断を許さない。更に貿易摩擦の問題をはじめ、大手を中心としてこれまで順調に推移してきた企業業績にどのような影響が及ぶのかという外部環境も不透明さを増している。増税前後の住宅需要の平準化に努めることと同時に、増税対応策が終了した以降の対応も見据える必要がある。

 住宅新報が住宅・不動産業の経営者を対象に実施した新年恒例の景況アンケートでは、そうした今年1年の厳しい市場環境を覚悟した経営姿勢がはっきりと表れた。昨年のアンケートでは、日本経済の見通しについて、「景気の回復基調が強まる」「前年よりやや改善する」の回答を合わせ、52%が「景気回復の1年」になると展望した。今回調査ではそれが20%に大幅に低下し、「前年より厳しくなる」との回答が26%(前年0%)に高まっている。また住宅・不動産市場の景況についても、「前年より厳しくなる」とする見通しが、前年の9.8%から28.0%に上昇しており、同様の傾向が見受けられた。消費税増税と先行き不透明な世界経済等を主な理由として景気回復が鈍化し、少なからずその影響が住宅・不動産市場にも及んでくるとの見方だ。

 先行き不透明な中、今年大きな風を起こしそうなのが、4月から順次始まる「働き方改革」だ。先のアンケートでも、自社内の改革は当然として、多くの経営トップが今年の注目したいキーワードとして挙げている。急ピッチで多様化が進むオフィスニーズへの対応が急務となっている上、働き手側のライフスタイルにも大きな変化をもたらす可能性を秘めているためと思われる。

 今年は改元と共に新しい時代が幕を開ける。来年に迫った東京五輪・パラリンピックの準備も仕上げの段階を迎える。「働き方改革」が社会構造に変化をもたらす可能性も高い。

 ビジネスや住生活に新たな需要が芽生える可能性が期待される。イベント目白押しの目まぐるしい1年となるだけに、冷静な判断力と迅速な行動力をもって乗り切ることを願いたい。