総合

大言小語 〝人間産業〟

 人の生活と不動産は切り離せない。だから不動産業は〝人間産業〟といわれる。しかし、社会には様々な階層の人がいるから、ひとくちに人間産業といっても、その実相は多様だ。

 ▼社会的弱者のための住まいを確保する「改正住宅セーフティネット法」が昨年10月にスタートした。1年余が経過したが〝登録住宅〟は全国で約4000戸に過ぎないから、不動産業は人間産業だが、弱者のための産業とは言いがたい。日本でもここまで格差社会が色濃くなると、さすがに「勝ち組・負け組」という言葉はかえって使いづらい。つまり、〝格差〟は静かに潜行する。

 ▼格差の潜行を放置すればどうなるか。勝ち組が増え、負け組みが減少することは想像しにくい。ただ、民主主義国ではスーパーリッチも失業者も同じ一票を持つから、負け組みが増えると社会はよい方向に修正されるという説があるが本当だろうか。社会をよくするには誰もが〝人間らしく生きられる〟環境を整備することだ。ベーシックインカムの議論もやがて始まるだろうが、その前に不動産業にできることがある。

 ▼それは地域を見つめ直し、そこに暮らす人たちの笑顔を増やす対策を考えることである。地域と不動産業は一蓮托生。中でも地域密着の中小不動産業者はたとえ人口減少に悩むエリアでも「逃げ出せない」と覚悟する潔さがあれば、起死回生のヒントを思いつく。