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大言小語 揺らぐもの

 今、触れずにいられない話題と言えば、建物に使われる免震・制振用ダンパー装置の「検査データ改ざん問題」になるだろう。建設・不動産業界だけではなく、世間一般を震撼させたことは間違いない。ただ、これら装置が実際に使用されている建物が揺らぎ、損壊などの大きな被害を出したという事例は、いまのところ判明していないようだ。

 ▼似たようなケースで思い出されるのは、05年に発覚した「姉歯問題」と言える。元一級建築士が構造計算書を改ざんして、建物の耐震性能を偽装していたというものだ。私事だが亡くなった父は、その当時、構造設計事務所を営んでいた。「設計者は、命にかかわる大事な仕事に携わっているのに、いったい何を考えているんだ」とテレビを見ながら、非常に腹を立てていた姿を思い出す。

 ▼改ざんと言えば先日も、東京医科大学の入学試験の合否判定を不正に操作し、本来ならば受かっていたはずの人たちが不合格者とされた問題が見つかったばかり。これも、人の人生を大きく左右させる判断であり、恣意が悪影響を及ぼしている事例だ。

 ▼そう言えば、霞が関でも、障害者の法定雇用率の計算で、普通の近眼者の数を参入するなどの水増し問題が発覚している。冒頭で述べた免震装置は、一般のマンションや戸建住宅だけでなく、中央省庁の庁舎でも使われているというのは、何やら皮肉めいたものを感じる。