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社説 旺盛なインバウンド需要 更なる取り組みに不動産の力を

 7月18日、観光庁長官が定例の記者会見を行い、18年1月から6月までの訪日外国人が1589万人を超え、半年間というスパンでは過去最高の旅行者数となったと発表した。17年の訪日外国人数は過去最高の2869万人だったが、このままのペースで行けば、3000万人を超えるのは確実な情勢だ。

 政府は20年に訪日外国人旅行者数を4000万人とする目標を立てた「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定している。その目標達成において順調な見通しが立っていることは確かだ。だが、はたして今のままでインバウンド需要が右肩上がりに続くと断言できるだろうか。

 ビジョンでは、30年には訪日外国人6000万人を目標としている。そのためには、新しい市場の開拓としての長期滞在と消費拡大の同時実現、疲弊した温泉街や地方都市を未来発想の経営で再生、活性化する――など新しい観光産業の革新の必要性をうたっているが、実現実行性はどうか。ビジョンの実行計画である「観光ビジョン実現プログラム2018」では、新たな観光資源として「ナイトタイムの活用」「公共空間の柔軟な活用」「地域の古民家を観光まちづくりの核として面的に再生・活用する取り組みを推進」することなど主要施策が発表されたが、もっと魅力のある取り組みが求められるところだ。

 それには、地元の自治体、特に市町村単位の参加が欠かせないし、地域に精通した地域不動産業者やディベロッパーなどの役割も求められる。地元の声を取り入れた新しい観光資源が発掘されることを期待したい。

 また、民泊サービスの普及も挙げられているが、民泊事業の登録件数の伸び悩みなど、厳しい自治体の上乗せ条例などで〝角を矯めて牛を殺されている〟面もある。気づきや刺激を与えてくれる外国の人たちの受け入れを更に積極的に行っていくため、自治体も方針転換していく必要性があるし、家主同居型の民泊をもっと増やす必要があるだろう。

受け入れ態勢は大丈夫か

 一つ心配な点がある。欧州などでは、許容限度を超えて外国人観光客が押し寄せているオーバーツーリズムが問題となっている。日本でも、神奈川県鎌倉市では市民の足である江ノ島電鉄(江ノ電)が恒常的に遅延している。理由は、観光客などの乗車による混雑だ。鎌倉市では、地元の住民を優先的に利用できる仕組みをつくり、対策に乗り出しているが、日曜休日を中心に混雑状況は続いている。インバウンドを支える態勢として、民泊やホテルなど、こと宿泊だけに目を奪われがちだが、公共インフラなどの社会システムそのものにも、オーバーツーリズムの影響は出てくる。需要喚起だけでない、先を見据えたインバウンド対策を更に政府には求めたい。