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大言小語 会社は「社会の公器」

 90年代後半、米国で半導体など最先端技術の事業を立ち上げ、ニューヨークやロンドンの証券取引所で株式を公開した原丈人氏(アライアンス・フォーラム財団代表理事)はそのとき、資本主義の流れはおかしいと疑問を持つようになった。「短期間にいかに儲けるか、株主利益だけを追求してくる」株主たちとの闘いや、株主資本主義の現実に直面したのだ。

 ▼「会社は株主のもの」という英米型の株主資本主義。グローバル化の流れで90年代以降、日本を含め主要先進国では、短期投資に都合がいいように会社法、企業統治、会計基準などの各種制度が整えられていった。その信者も多いが、行き過ぎると、企業経営に中長期的な視点が希薄になると共に労働分配率も下がり続け、中間層の崩壊、格差拡大の流れを増幅することになりかねない。

 ▼この危機を打開しようと原氏が提唱し続けているのが関係者すべてが報われる公益資本主義だ。6月2日、都内で講演した。会社は「社会の公器」であり、「従業員や顧客、取引先、地域社会、更には地球全体といった、会社を支える〝社中(カンパニー)〟によって成り立っている。決して株主だけのものではない」。そして「創造した価値を社中に分配すれば、社中全体に豊かさがいきわたる」仕組みである。再び中間層を増やし、社会の安定を築く新たな経済システムである。大いに期待したい。