総合

社説 不動産「おとり広告」の撲滅 決意示して取り組むとき

 不動産広告は、不動産物件を探す消費者とあっせんする不動産業界を結ぶ入り口であり、不動産取引の生命線である。そこを経て初めて需要者の希望物件の選別が行われ、取引成立へと進む。需要者にとっては暮らしの基盤やマイホームの実現を図る第一歩となり、業界側にとってはビジネスに欠かせないスタートライン、手段でもある。

 その不動産市場の表玄関というべきところに、一部とはいえ「不当表示」や「おとり広告」がはびこっていては、「安全・安心な取引」という業界の社会的使命が果たせないだけでなく、業界の「信頼」やイメージアップを勝ち取ることも覚束ない。そのため、業界の自主規制団体である首都圏不動産公正取引協議会など各地の不動産公取協は消費者庁や国土交通省と連携しながら、「おとり広告」の撲滅に取り組んでいる。だが、残念ながら今なお消え去ったとはいえず、むしろインターネット時代を迎えて、手口の巧妙化や悪質化も進んでいる現状がある。

 事態を重く見た首都圏公取協は今年から加盟する不動産ポータルサイト(適正化部会5社)の協力を得て、悪質な業者に対して厳重指導と違約金課徴(初回50万円、2回目以降500万円)に加え、「広告停止1カ月以上」とする厳しい姿勢で臨んでいる。「おとり広告」を行うと、一定期間不動産広告ができず、営業上大きなリスクを負うことを周知して排除する作戦である。8月からは近畿地区不動産公取協でも同様の制度が始動。おとり広告撲滅の動きは全国的な広がりを見せている。

ネットの賃貸物件が大半

 その「おとり広告」とは、取引をする意思がない物件や契約済み物件、あるいは架空物件を掲載して顧客を店舗に呼び込むための広告である。「訪問したら別の物件を紹介された。不信感を抱きながらも別の物件で決めた」というのが典型的なケースで、特に目立つのが賃貸住宅での広告だ。首都圏公取協によると、16年度の厳重指導・課徴金措置は62件で、そのうちインターネット広告が9割以上を占め、大半が賃貸住宅物件だった。17年度も毎月5~6件ペースで悪質な違反事例が報告されており、厳罰体制に入っても目に見えて減ったわけではないところに、問題の根深さがある。また、調査体制を強化・拡充すればするほど増えるという指摘もある。

 「おとり広告」の撲滅運動はこれまで何度も繰り返されてきたが、今回の取り組みこそ、業界の将来のためにも実効を上げなければならない。それにはインターネット時代ならではの「おとり広告」の摘発と排除するための制度やシステムを整備すると共に、場合によっては行政の後押しを含めたもう一段の罰則や制裁を検討する必要もあるだろう。その決意を周知徹底しながら、本腰を入れて粘り強く取り組むときである。