総合

大言小語 職場環境を考える

 未来ある前途洋々な若者が、なぜ死を選ばなければならなかったのか。大手広告会社で発生した過労自殺問題は、労働の現場に依然としてはびこっている根強い弊害を世に示した。

 ▼報道されているような酷さはなかったものの、小生も若い頃に勤めていた以前の会社で、過酷な労働を強いられたことがある。「その時は辛かったが、いい経験を積むことができた」「その時の苦労があるからこそ、今の自分がある」。時にはそのようにうそぶいていた自分を、恥ずかしく思う。

 ▼過酷な労働はなくても、人は育つ。愛のある教育で、人は成長する。「厳しさを教える」ことについて、意味を履き違えている企業は即刻考えを改めるべきだ。

 ▼労働時間の長さだけが問題なのではない。もちろん、常識の範囲内の話ではあるが、時間を忘れて物事に打ち込むことはあるし、それにめげることのない強い精神力を持ち合わせているのが人間だ。

 ▼要は、「やる気」や「やり甲斐」を保ち続けられるだけの職場環境であるかどうかなのだ。それは時として、「頑張っているね」「お疲れ様」「ありがとう」というたった一つの労いの言葉だけでも、十分な効果を発揮することがある。杓子定規のように「夜10時以降は全社消灯。残業せずに体を休めましょう」といった号令だけでは、根本的な解決には至らない。