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大言小語 生きる拠り所

「安心できる『住居』は生存、生活、福祉の基礎であり、基本的人権である」とする日本居住福祉学会の考え方が今、注目されている。木村草太・首都大学東京准教授を招き、「憲法第25条と生活保障と居住福祉」と題した講演会を開いた際、意見交換した早川和男会長(神戸大名誉教授)は言う。

 ▼「憲法学者の間ではこれまで、人が生きるには生活保護法があればいいと思っていたが、受給者の死亡率が一般の4、5倍あった事実から、お金だけでなく『住居』『居住環境』の大切さが分かったという。また刑期を終えた受刑者が戻りたいがために罪を犯す。これも居住環境の問題である」と。

 ▼景気低迷と共に我が国の生活保護世帯は増え続け、昨年末に163万世帯を超えた。約半数を65歳以上の世帯が占める。生きる原点となる「居住」と「居住環境」が確保されているのか気に掛かる。住宅は経済的に恵まれない高齢者にとって最も切実な問題である。

 ▼賃貸に住む場合、安価な公的住宅は競争率が高く入居が難しい。民間賃貸では敬遠される上に、定期的な契約更新、家賃値上げもある。健康なうちはいいが、いつ何が起こるか分からない。首都圏在住の後期高齢期に入った知人は数年前、肺がんに侵されて状況が急変。かさむ医療・介護費で瀬戸際に追い込まれた。人が「生きる」拠り所となる住宅は、正に人権であることを思い知らされる。