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大言小語 大事には至らず

 まさかというか、やはりというべきか、実家に暮らすやや認知症の進んだ高齢の母にも、振り込め詐欺の電話がかかってくるようになってしまった。幸いにも実家は二世帯住宅で、その電話に受け答えしていた母の様子に、同じ棟に暮らす兄がいち早く気づいてくれたおかげで、大事には至らずに済んだ。それ以前に、振り込めのご期待に添えるほどの蓄えもないことのほうが、もっと深刻な問題ではあるのだが。

 ▼特殊詐欺と呼ばれる振り込め詐欺は年々、巧妙化していると聞く。昨年1年間の被害額は急増し、初めて500億円を超えたそうだ。ATMの未然防止機能や金融機関のスタッフの声掛けなどの水際対策も功を奏し、警察が未然に防げた被害も過去最多に上ったというのだが、どちらにしても被害額は増加の一途をたどっているらしく、詐欺の活動が活発になっている印象は拭えない。

 ▼不動産業は、こうした犯罪も含め事件や事故を水際で未然防止できる数少ない業種でもある。今ではほとんどの団体組織が地域の警察署と防犯の協力関係を結んでいる。しかし、最近同様の詐欺を働くグループに活動の拠点確保に意図的に協力したとして、不動産会社役員が逮捕される事件も起きている。詐欺グループに加担しているという悪いイメージを広げないためにも、業界内部にも目を向けて未然防止に一役買ってもらいたい。