政策

社説 太陽光、接続拒否 再エネ普及へ発送電分離を急げ

 当初から懸念されていたことが出来した。九州電力が9月24日に、電力の安定供給に支障をきたすとの理由から太陽光発電の接続拒否を発表すると、30日には北海道、東北、四国の3電力会社がそれに続いた。再生可能エネルギー普及に向け12年7月に始まった固定価格買い取り制度だが早くも、10電力会社の半数で暗礁に乗り上げた格好だ。

 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再エネ法)が11年8月に成立したとき、これで日本もようやく電力自由化が本格スタートすると期待された。ただ、その法律の内容に関してはいくつかの問題点も指摘されていた。

 その第一は、再エネ電力普及の目標値が法律に盛り込まれなかったことである。ちなみにドイツの再エネ法では、電力消費に占める再生可能エネルギーの比率を20年に35%、30年には50%にするなど明確な目標を定めている。電力問題に限らず、大きな改革を実現するためには具体的な数値目標を設定することが肝要である。

 第二は、電力会社の買い取り義務や系統への接続義務についても、「電気事業者の利益を不当に害するおそれがあるときや、電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」には免除する規定が盛り込まれている点だ。「これではせっかくの法律が骨抜きになってしまうのではないか」との懸念が当初からあった。確かに出力が不安定化しやすい太陽光発電や風力発電を系統に接続すれば需給バランスが崩れ、安定供給に支障をきたす可能性はある。

 しかし、そのようなことは制度創設に当たり当然、織り込み済みのはずだ。重要なことは、再エネ電力を導入しても、「同時同量の原則」を維持し、需給バランスを安定化させるための工夫や技術開発が行われているかである。そもそも、既存の電力会社と再エネ発電事業者とは競合関係にあるわけだが、電力自由化を実現するためには、現時点で系統を管理・運用している電力会社にシステム安定化のための努力義務を課し、厳しく監視していくしかない。

 日本より10年も早く固定価格買い取り制度を始めたドイツの再エネ法は、送電・配電事業者に対し、再生可能エネルギーを電源とした電力を化石燃料による電力より優先して接続する義務を課している。発送電分離ができている国だからこそ可能なわけだが、00年からの10年間で再エネ電力を2.7倍に拡大し、電力消費に占める比率を20%まで高めることができている。

 こうした目覚ましい実績を見れば、いまや世界の常識となっている発送電分離を、日本も一刻も早く実現させるべきである。それを行わずして買い取り制度を続けても、との危惧を抱かせる。今回の5電力会社の買い取り中断という事態がそれを証明している。