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大言小語 「感じのいい」店

 小さな居酒屋は夫婦でやっていることが多い。最近は〝高齢化〟が目立ち、永い年月を共に過ごしてきた二人ならではの風合いが感じられ、勉強になる。

 ▼しかし、最近は足が遠のくことも増えた。飽きない店の条件は3つある。(1)旨い(2)安い(3)感じがいい――。もっとも3拍子揃った店などめったにない。だから不満を抱きつつも仕方なく行く。「今日はどこがいいか」と悩むうち、3要素の中で、はずせないものがあることに気付いた。当たり前だが、「感じがいい」ということだ。

 ▼どれほど旨くても、安くても、感じが悪い店など行くわけがない。では「感じ」とは何か。人に紹介され、東京・人形町にある下町の歯科医院に通っている。これまでの経験だと、いつまでも治療期間を延ばされると腹が立ったものだが、そこは「今日で終わりです」と言われるのが怖いぐらい「感じがいい」。また、先日聞いた話だが病気でもないのに行きたくなるぐらい感じのいい病院があるという。

 ▼もし、用事もないのにちょっと立ち寄りたくなる不動産会社があったら、面白いのではないか。「住宅を買いたいのだが」と言えば、「今は止めときなさいよ」と言われ、「借りたいのだが」と言うと、「今はいい部屋がないね」と断られる。そんな店が近所にあったら毎日でも議論をふっかけに行きたくなるのではないか。畢竟(ひっきょう)、「感じがいい」とはそういうことだ。