政策

社説 ヘルスケアリートに期待 心から喜ばれる施設を

 今年後半にも、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅といったヘルスケア施設に特化したリートが登場する。リート市場全体の活性化にもつながるヘルスケアリートに対しては、いやが上にも期待が高まる。国土交通省も、リートが高齢者向け住宅などを取得運用する際の留意点や組織体制の在り方を示した「ガイドライン」を6月末にも策定する。ヘルスケアリートの成功に向け、官民一体となった取り組みを更に充実させるべきだ。

 ヘルスケアリートは、米国では既に広く活用されており、リート投資の13%を占めるという。一方の日本は、オフィスビルなどを投資対象とするリートに数件のヘルスケア施設が含まれる程度だ。

 日本では、そもそも高齢者住宅事業に取り組む住宅・不動産会社自体が少ない。「運営の難しさ」が大きなネックのようだが、周辺会社と連携するなどして、積極的に事業参画すべきだと考える。その後押しのために、建設補助など国のバックアップも欠かせない。

 高齢者住宅は、現在リートが投資対象としている賃貸住宅などと異なり、「立地」「スペック」のハード的要素だけでは評価できない難しさがある。「運営事業者リスク」と言われているが、運営者が入居者に提供するサービス、いわゆるソフト面が利回りに大きく影響するということだ。単純な物差しでは測れない部分だけに、一般的な物件よりも投資家からは厳しい目で見られることが予想される。

運営者のサービスで左右

 ただ、逆に考えれば、立地に難があっても、運営者のサービスがしっかりしていれば高利回りを確保できる物件になる。通常なら投資対象として見向きもされない立地でも、高齢者施設への投資として可能性が残される。ヘルスケアリートは、土地の有効活用の幅を広げるといった役割も担っている。

 ヘルスケアリート成功のためには、まずは、入居者(高齢者)から支持され、終の棲家として選んでもらえる物件を数多く供給することが条件となる。残された時間を、安心して穏やかに、悔いのないよう過ごせる場所、それまで懸命に動かし続けた体と心を、残り数年間、じっくりと労り休められる場所とは何かといった研究も必要になる。

 じきに逝く世代に敬意を払い、最後の身の回りのお世話をするという献身の心が運営事業者に染み渡っていれば、必ずや入居者から高い評価を得られるはずだ。このソフト部分のサービスは、世界に誇れる「おもてなし精神」を持つ日本こそ、大きなアドバンテージがあると感じる。

 「運営事業者リスク」について、よくよく考えれば、実はリスクをコントロールすることができるのも、運営事業者となる。