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大言小語 相続の新常識

 全国の死亡者数は年間約120万人で、このうち約5万人が相続税納税者だ。増税を来年に控えて、相続関連ビジネスも活発だ。コンサルティングをはじめ納税資金一時立て替えなど新種のサービスもあり、裾野が広がりつつある。相続対策の一手である不動産投資も高水準が続いている。

 ▼相続と聞いて思い浮かべるのは、身内のもめごと話だ。ある司法書士は、「遺産分割で一度でももめごとが起きてしまうと、とことんこじれてしまう」。特に「時間を費やす案件ほど、次々ともめごとが噴出して解決の糸口すらつかめない」と半ばあきらめ顔で話す。一方、税理士も増税と高齢化の時代を迎えて、普通の家にも相続税がかかる、老々相続が増える、遺産が少ないほどもめるという「相続の新常識」を訴える。遺産分割協議が不調となり家裁の調停を受けた案件を財産規模別でみると、1000万円以下が3割、5000万円以下が7割に上る実態は、相続税が大衆課税に近付いている表れだ。

 ▼今後、相続対策に悩む人が増えることになるが、重要なのは対策の順序と税の専門家は口をそろえる。遺産分割しやすい現金の準備、納税資金の確保、その次に不動産投資などの節税対策があるとし、この順序を間違えた相続対策はトラブルの温床になりやすいと警鐘を鳴らす。円満な相続に向けて、専門家たちの言葉を肝に銘じたい。