資格・実務

なぜ資格を取るべきなのか 資格が持つ「3つの効用」

<p> 春の季節がやって来た。春は、新しい人生を切り開くためのきっかけになるとき。そういう春の連想のなかに、「資格取得」のこともぜひ加えていただきたい。不動産関係の資格は、ほとんどが夏から秋にかけて試験が行われる。その栄冠を勝ち取るには、いつからスタートするのがよいか。まさに「今でしょ!」なのである。</p> <div align="right"><b>(資格コーディネーター・高島徹治)</b></div><br>

 1番目に挙げたいのは、資格を取れば、国の法律が求める「法律上の要請」を充たすことができる、ということだ。

 今更いうまでもないが、宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者は、宅地建物取引にあたる従業員5人につき1人以上の宅地建物取引主任者を置かなければならない、という定めをしている。この法的要請を充たさない業者は、営業ができない。したがって、経営者は社員にこの資格を取得するよう求め、なかには手当てを支給している会社もある。また、採用にあたっても、資格を取得している人を優先的に採用するのが一般的だ。

優遇される資格

 マンション管理業界においても、マンション管理適正化法によって、国土交通省令で定める人数の管理業務主任者を置かなければ、営業ができない。したがって、資格者は宅建主任者と同じように優遇を受ける傾向にある。

 したがって、この「法律上の要請」に応えることができる、というのは、資格の効用の基本といえるだろう。

他の部分まで信頼高まる

 資格を取った個人が受ける効用としては、ハロー効果が計りしれないほど大きい。

 ハロー効果とは、なにか1点優れていることがあると、単にその点だけでなく、ほかのあらゆる点で優れている、と見られることをいう。

肩書きで信用

 分かりやすい例でいえば、、東大卒や弁護士資格取得者、MBAの取得者などが、世間から見られる見方である。これらの人達も、決してオールラウンドな知識の所有者ではなく、得意な部分、不得意な部分がある。だが、決して世間は、そのようには見ないものなのだ。仮に法律の専門家である弁護士が、経済について語ったとしよう。すると、専門ではないにもかかわらず、「あの人が言うのだから、ほぼ間違いがないだろう」と受け取ってしまうのだ。

 仮に大きな肩書でなくとも、ありがたいことにはあらゆる資格にそのようなハロー効果が見られるのだ。資格を取ると、その人の発言力や発信力が一段と増すのである。

資格が周囲を変える

 私の知人の例だが、見識が深く、かつ専門的知識にも優れている人がいた。しかし、ある時点までは、社内でその人の意見はあまり重視されなかったようだ。それは、話し声が口のなかにこもる小声で、語尾もはっきりしないということがあったからのようだ。

 しかし、彼が中小企業診断士の試験に合格し、登録をしたことが知れ渡ったら、社内の空気が変わった。同じような話し方であっても、「有資格者のあの人が言うのだから、しっかりと聞き取ろう」という空気に一変してしまったのだ。

 こういうことを知っているはずの筆者自身が、他人のハロー効果には弱いほうだ。ごく卑近な話で恐縮だが、隣地の中古戸建て住宅が売りに出されるというので、ある大手の不動産販売会社の、一見若風の人が、あいさつに訪れた。ちょうど多忙を極めていたので、適当に応対してお引き取りをいただいたが、置いていった名刺の名前の末尾に、小さな文字で「宅地建物取引主任者」と書かれていた。「そうか、大分若い風だったので、そそくさと応対したが、資格者だったのか。道理で、話はしっかりしていたな」と、その人を見直したのだ。

 資格は、けっして軽視できない効用をもっているのである。

生きる武器に

 資格の効用として3番目に挙げたいのは、仮に会社を離れたとしても、職業人として生きていく武器を提供してくれる、ということである。最近は雇用情勢が厳しく、過去に貢献度が高かった社員でも、冷遇される例がよく報道されている。また、会社に悪意がなくても、経営が成り立たず、あえてリストラ的改革に走る会社もある。

 そうした情勢のとき、資格を持っていれば何がしかの安心感につながることは事実だろう。

自分一人でできる

 例えば、宅地建物取引主任者の資格を持っていれば、自分一人でも不動産仲介業の開業ができる。もちろん、自分が資格を持っていなくても、資格者を社員として雇う形でもいいが、これでは一人会社でなくなってしまい、二人分の売り上げを上げなければならない。その点、自分が資格を持っていれば、小規模経営ができる。

 司法書士や土地家屋調査士の資格があれば、まさに開業には打ってつけだ。もちろん競争の激しい時代だけに、開業が即成功に繋がるとは限らないが、要は経営のやり方次第なのである(この方法については、スペース的にそこまで書けないので省略せざるを得ない)。

 マンション管理士は、マンション管理組合を依頼主とする仕事だが、これも経営のやり方次第である。マンション管理士と行政書士のダブル資格で、そのマンションの管理組合だけでなく、住人一人ひとりの法律アドバイザー役にもなって、マンションまるごと囲い込んで成功している人もいる。

 最近は、不動産という資産を核に、金融資産、生命保険などのリスク管理を行うファイナンシャルプランニング技能士の受験者が多い。これなども、応用範囲の広い資格で、工夫をすれば、自営も可能だと思われる。

      ◇

 資格の効用については否定論もあるが、それは資格の活用法を間違っていたり、本来資格に求めるべきでない事柄を求めている場合がほとんどである。資格を賢明に活用すれば、先に述べた3つ以外にも、様々なメリットをもたらしてくれる。