政策

社説 グローバル化と不動産業 海外の人材を受け入れる

 本格的なグローバル時代に入り、海外とのビジネスの結び付きはますます強まる方向にある。このため、日本企業の間で外国人の社員・スタッフを積極採用する動きが強まっている。海外に活路を見出した企業の中には、新卒採用の2~3割を外国人にすることも珍しくない。日本人の住宅需要が将来先細りしていく心配を抱える不動産業も、不動産取引のグローバル化に対応するために、外国人の採用を真剣に検討することが求められる。

国内労働力が半減

 国外に労働力を求める背景には、経済のグローバル化という流れに加えて、少子高齢化に伴って日本人の労働力が急速に減少していくという深刻な国内事情も横たわっている。国の推計によれば、現在約100万人を数える出生数は長期的な減少が続くという。60年には48万人にまで減少することが見込まれており、これに伴って労働力の中核と位置付けられる15歳以上65歳未満の生産年齢人口が、13年の約8000万人から60年には約4418万人にほぼ半減するとの見方もある。日本の経済力の低下が危惧されることは当然ながら、たとえ仕事があったとしても働き手が不在という事態すら招きかねない。

ビジネス拡大の好機

 足元では、こうした心配の種が現実のものとなってきている。東日本大震災の復興や東京五輪開催を受けて、当面、建設需要の増加が見込まれているが、肝心の建設業の人材不足もまた深刻化しているためだ。こうした事態に対し政府も急きょ、外国人建設労働者の受け入れを緩和していく方針を打ち出したところだ。

 不動産業でも外国人の労働力に対する期待は確実に高まってきている。在日外国人の住宅需要の増加や、国境を越えた不動産取引が活発化しているからだ。

 日本人学生を対象に不動産業向けのインターンシップ制度をいち早く取り入れた日本賃貸住宅管理協会は、数年前から留学生にも対象を広げて、外国人の不動産業界への就労に力を入れている。学生不足に悩む学校も、一定の学生数確保のために留学生枠を拡大している。留学生を呼び込むために卒業後に向けた就職カリキュラムまで用意する周到ぶりで、実際に不動産業を含め日本企業へ就職する学生は増えていると見られる。

 徐々にだが海外の労働力を受け入れる体制が整いつつあることは、日本企業にとって追い風だ。人口減少など不動産業に先行き不安が漂う中、海外からの人口流入を前向きにとらえて、中期的には不動産取引のグローバル化に生かしつつ、同時に外国人向け住宅などビジネス機会を拡大する好機到来と考えるべきだろう。