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大言小語 「ついの居酒屋」

 理想の居酒屋は(1)旨い(2)安い(3)感じが良い――の3条件に加え(4)長く通えるという点が重要になる。3つの要素が揃っていても、週に2回も通うと飽き始める。「大したことはないか」一度そう思うと、それが滓(おり)のように体内に沈殿し、いずれ足が遠のく。それだと「ついの居酒屋」にならない。

 ▼長く通うためには、行くたびに新しい発見が欲しいが、それは人との交流の中でしか生まれない。店の主人やママさんとの何気ない会話。顔馴染みになった客との交流が新しい刺激になることもある。一言もしゃべらずに呑み続けるのは、やはり苦痛だ。 最近、シェアハウスが人気だが、成功するための鍵が入居者同士の交流や、良質なコミュニティ形成にあることに通じる。

 ▼そうだとすると、交流自体を長続きさせることが重要だ。そのための秘訣はおそらく、他人との上手な距離の取り方にある。居酒屋はアルコールを摂取する場だから、つい羽目をはずしてしまうこともある。すると、それまでの努力もむなしく交流が途絶えてしまう。シェアハウスではどういうルールを設けるべきだろうか。

 ▼「ついの居酒屋」は、酒飲みの理想である。高齢者にとっての「ついの住まい」も、「終の」ではなく、理想の住まいにするべきである。人との距離の取り方をさんざん訓練してきた高齢者であれば、人との交流や、長続きするコミュニティの形成にも長けているだろうから。