政策

社説 3つの成長路線 業界版〝アベノミクス〟に挑戦

 中小不動産業界団体の支部新年会を覗くと「安倍首相のアベノミクス効果で、今年は明るい年になりそうだ」と期待する声が多く聞かれた。確かに、ムードはいい。もともと景気は〝気分〟的なものが大きいのだから、業界にとっても今年はチャンスと見たい。ただ、国頼み、人まかせはだめだ。アベノミクス「3本の矢」の一つは規制緩和による成長分野発掘だ。

 住宅・不動産業界には3つの成長分野があると思う。一つは、仲介業務のコンサルティング化である。インターネットの普及で、もはや物件情報を中心としたビジネススタイルには限界がある。物件情報はおろか、税制やローンなどの関連知識も含め「ユーザーの中には不動産業者よりも詳しい人がいる」とさえ言われる時代だ。とすれば、これからの不動産業者に求められる専門性とは何か。不動産に対する総合知識と豊富な体験にもとづいたコンサルティング能力の発揮しかないであろう。

 二つ目は、不動産金融の高度化である。従来から不動産金融といえば金融機関による不動産担保金融が主流だった。これに加え、大手はJリートなど不動産証券化という新たな資金調達手段を手に入れたが、中小不動産業にも事業資金を銀行だけでなく、一般投資家から調達するビジネス手法が開拓されつつある。インターネットを活用して、幅広い事業用資金を媒介するソーシャルレンディングのベンチャー企業も成長してきている。また、京町家の再生など、管理信託を活用した不動産事業なども始まっている。資金調達の多様化が、不動産業そのものの変革につながることを期待したい。

〝脱・不動産業〟という発想

 三つ目は、目下空室増加が深刻な賃貸住宅市場の再生である。空室増加は若年世代の減少など構造的問題である。それだけに、従来の発想にとらわれない抜本的改革を実践し、賃貸住宅市場を大きく成長させるチャンスである。

 抜本的改革とは何かと言えば、従来の「部屋(ハコ)貸し」の発想から、持家(分譲)系市場ではとっくに始まっている「暮らし」というソフトの提供へと視点を変えることである。そのためにはまず、賃貸オーナーの意識改革が必要だが、管理会社としての立場から、オーナーを啓発する努力も求められている。賃貸市場を「仲介」という視点だけでなく、「管理」という視点から見直すことが重要だ。

 世の中全体の景気が良くなるのを待つのではなく、不動産の世界から景気をリードするためにも、不動産業の「脱・不動産業化」を、今こそ促進するときである。求められるのは、法律上の規制改革に留まらない。自由な発想を妨げている従来からの〝慣習〟という名の業界規制を外すことも成長につながる。