明けない夜はない、というが明けない年もない。未だ数多く起きる東日本大震災の余震やデフレ経済が続き、社会保障も含め先行き不透明な現状であっても、正月はやって来た。いや、迎えられたというべきか。
▼昨年は、震災の喪に服していた部分もあって、喜びを表すのもためらわれた。もちろん、復興は遅々として進んでいないが、人々の間に従来通り祝う気持ちも戻って来たのではないだろうか。
▼正月を祝う言葉としては「明けましておめでとうございます」「賀正」「謹賀新年」などあるが、古くは「御慶(ぎょけい)」というものもあった。落語ファンなら、富くじが当たって、慣れない裃(かみしも)を着てあいさつ回りをする際、「御慶」「永日(えいじつ)」を繰り返す八五郎の噺を思い起こす人もいるだろう。
▼今、「御慶」「永日」を叫びたいのは、自民党か。3年超の雌伏から表舞台に返り咲いた。ただし、八五郎のように喜んでばかりもいられない。レーガノミックスを真似た言葉も出ているが、中身は先祖返りにすぎないという辛辣な批判もある。
▼まるで、福島第一原発の事故などなかったかのような、原発再稼働はおろか新設の認可まであり得るという首相の発言には耳を疑う人も多いだろう。実は今回選挙の比例得票数は、惨敗した前回選挙より低いのだ。まずは、国民の声をしっかり聞いて、国の舵取りをしてほしい。