政策

社説 省エネ不動産とは何か 価値判断よりも適合義務化を

 太陽光パネルや燃料電池、蓄電池などエネルギーに関した取り組みが盛んに行われている。それでいながら、こうした取り組みが、建物の価値を上げることにもつながっているのかどうかは疑問符がつく。

 省エネ性能の高い環境不動産であることが、不動産投資のポイントとして高く評価されているとは言えないからである。

分かりにくい基準

 わが国の建築物に関する環境性能の認証制度としては、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)がある。環境に配慮し、ランニングコストにも無駄がないかなどを客観的に評価しようというものだが、残念ながら、その認知度は低い。評価手法が専門的であることや、目に見える効果がつかみにくいことにも理由がある。

 欧州では住宅の燃費を表す指標をエネルギーパスとして中古住宅の売買で義務づけている国もある。わが国でもエネルギーの消費量などを車と同様に、分かりやすく表示すべきであるという指摘がようやくされてきたところだ。

 これまで収益や再調達の費用からばかり、建物を評価しがちであったのを、いかに省エネ性能が高いかに日が当たるようになったのは好ましい。しかし投資判断のひとつに使おうとしたことも、認知が広がらない要因ではないのか。

投資にはなじまず

 不動産投資では、いかにパフォーマンスが高いかが、大きな判断基準になる。ところがエコとか省エネというのは、本来、合理的な投資パフォーマンスになじまない。むしろ環境に配慮した不動産は、コストが高い。そんな当たり前のことの自覚に欠けている。

 だからこそ世の中に広めるためには、既存の判断基準に立脚するのは古いとしたほうがいい。つまりは投資の助けを借りずに、住まいのあり方として確立しなければならない。

 かつて40年ほど前、車の排気ガスを規制するために、マスキー法が施行された。わが国でも日本版マスキー法として、クリアするのが不可能とまで言われた厳しい内容だったが、自動車メーカー各社は研究と開発努力でクリアしていった。義務化が至上命題にされた結実だった。

 やや遠い将来であることから、あまり話題にはなっていないが、住宅の省エネについて国の方向性ははっきりしている。それは2020年までに、すべての新築住宅・建築物について省エネ基準への適合を段階的に義務化するとなっているのだ。

 国土交通省の13年度概算要求では、環境不動産の普及促進を図るために、3000万円の予算で認証制度構築に向けたベンチマークを確立する作業に入る。認証制度もいいが、決断したら実行する。義務化の徹底に期待したい。投資に適さないから普及しないという功利は、排除していい。