政策

社説 営業マン資格が業界を変える 信頼産業への機は熟した

 不動産営業に従事する営業マンは全員が公的資格を持つべきではないか||そうした意見が業界関係者の間から出てきた。

 住宅など不動産は、個人にとって一生に一度か二度という大きな買い物だ。売る(業界)側と、買う側の情報格差は宿命的でもある。

 それだけに、そのような情報の非対称性を解消するため、どんな情報をどういうタイミングで開示していくべきか、という議論は実は従来からなされてきた。

情報格差は宿命的

 物件の立地や日照などの周辺環境、地盤、建物耐震性などの構造面、更に権利関係や法令上の制限、ネガティブ情報などその内容は多岐にわたる。それらを適時的確に提供するシステムが重要なことはもちろんだが、受け手はまさに素人。提供される情報の的確さや、過不足の有無さえ判断が難しいのが実態だ。 

 最終的に住宅購入を決めた理由をユーザーに問うアンケートでは、「営業マンが信頼できたから」という回答が多くなるのはそのためだろう。

 それならば、最初から不動産営業マンに対する一定の信頼を国民が持てるようにしておく意義は大きいのではないか。

高額ゆえに重い責任

 住宅など個人にとって高額な取引に対する躊躇があるのは当然で、いざ踏み出そうとしても、どの会社に頼むべきか、親切な営業マンはいるか、物件の選択で失敗しないだろうか、本当に今が購入のチャンスなのだろうかなどなど、様々な迷いや不安が立ちはだかる。

 そうした不動産取引に対する精神的重圧を軽減するためには、業界全体の底上げを図り、国民から絶大な信頼を得るにたる人材の集団に変革させなければならない。 それが、経済の不透明化で潜在しつつある住宅需要の発掘にもつながるはずである。不動産流通市場の活性化には、個人間の資産リレーを託すにふさわしい業界のモラル確立が先決である。

 問題はそのための公的資格実現までのプロセスだが、一朝一夕にできるものでないことは確かだ。まずは、業界を挙げてそのような気運を盛り上げる必要があるだろう。

 幸いにも営業マンのレベル向上を目的とした講習や研修などはすでにいくつかの団体で実施されていていることを見ると、業界の問題意識は醸成されつつある。

 今こそ、大手から中堅・中小をもめた不動産業界の総意として、不動産営業マン全員が公的資格を持ち、国民の付託に報いるというビジョンを共有することを期待したい。