政策

社説 コンサルはなぜ必要か

自宅を資産形成に組み込む

 不動産流通近代化センターが毎年実施している不動産コンサルティング技能試験の受験者数が07年度以降5年連続で前年よりも減少している。06年度は1718人だったのが11年度は1118人だった。不動産業のコンサルティング化が進み、仲介業もコンサルティング能力が求められるようになってきたといわれているのに、なぜだろうか。

 インターネットの普及で物件探しが容易になっている昨今、ユーザーが不動産仲介会社に求めているものは「確認・相談」機能ではないか。価格の妥当性も住宅ローンの留意点も、必要な諸費用の算定もネットを使えば、ある程度の判断ができる。しかし、ネット情報ではどうしても得られないものがある。それは、真に自分の立場になって相談に乗ってくれる専門家のアドバイスだ。

納得したいユーザー

 ネットから得られる情報はあくまでも表面的なものでしかない。数千万円もする買い物を決断するためには、それだけでは足りない。本当に信頼できる専門家に自分の購入判断が正しいかどうかを相談し、自ら納得する確認作業が必要になる。不動産会社にはそうした期待に応えられる専門家が必要になってきた。

 ある仲介会社は、営業マン全員にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得させ、ライフプランの作成をサービスにしている。住宅ローンを借りるにあたって重要なことは「借入可能額」の算定ではなく、「返済可能額」を生涯にわたってチェックしておくことだからだ。融資を打診した銀行の審査が通ったと聞くと、それだけで安心してしまうユーザーが多いのが実態だろう。

不安な人生設計

 不動産コンサルティングに力をいれている別の不動産会社社長も、「不動産業者がFPの資格を取得することは(ユーザーの不安を解消させる意味で)極めて効果が大きい」と指摘している。

 不動産業のコンサルティング事業化が進んでいるのは、20年以上も続く低金利など日本の経済状況が背景にある。日本の個人資産の内訳について、蓮見正純船井財産コンサルタンツ社長はこう説明する。「3分の2が不動産、4分の1が金融資産。最大の特徴は不動産といっても自宅が半分以上を占めていることだ」。これを聞けば、日本人が老後の生活設計に不安を抱くのは当然であろう。

 どうしたら自宅を資産形成の中に組み込むことができるのか。今日的なこの難題に対応できる力があれば、不動産コンサルタントの最高峰になれるかもしれない。

 不動産コンサルティング技能資格は、国民の資産の大半となっている不動産を扱う専門家としては当然持つべきものであり、試験は優秀なコンサルタントになるための登竜門となる。